【ドイツ】「ペットの鳴き声」「掃除機利用」に規制 破れば罰金も 心身健やかに過ごす為の法律とは? | ラジトピ ラジオ関西トピックス

【ドイツ】「ペットの鳴き声」「掃除機利用」に規制 破れば罰金も 心身健やかに過ごす為の法律とは?

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 マンションやアパート暮らしにおいて、特に気を付けたいのは階下や隣の住人との「騒音トラブル」。ときには事件にまで発展するケースもあり、日本国内でもセンシティブな問題として認識されています。さて、ドイツではそんな騒音に対応する法律が細かく設定されているのだそう。ドイツの都市・アーヘンへの研究留学や移住のサポートをする「ヘルフェンサンカク」(神奈川県横浜市)に、具体的にどのようなルールがあるのか聞きました!

ドイツの「騒音対策」とは?

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 ドイツには「Die Ruhezeit(ルーエツァイト)」という、特定の時間帯や曜日を静かに過ごす必要がある規則が存在します。日本語に訳すと「安息時間」という意味で、成り立ちにはドイツならではの宗教観や考え方が関係しています。

「ドイツ人にとって、日曜日は宗教的観点から重要な日となっています。神聖ローマ帝国の時代からドイツは教会との関わりが強く信仰熱心な国だったものの、徐々に教会に通う人が減りつつあるという状況にありました。そこで政府は『日曜日と祝日は働かないでゆっくりし、心身の健康を保ちましょう』という趣旨の法律を定め、日曜日・祝日を“安息日”と定めました」(ヘルフェンサンカク)

 古くから「安息日」という考え方が存在していたドイツ、時は進み人口密度の増加に伴って隣人同士のトラブルが多発するようになり、穏やかに休息を取るはずの安息日にも支障が出はじめたそう。いつしか騒音問題は国家の悩みのタネに。ヘルフェンサンカクによると、ドイツは日本と同じくらいマンションが多く立ち並んでいるといいます。

 ストレスで心身の不調や近隣住人同士のいさかいが発生しないよう国は早急に対策を練る必要に迫られ、導入されたのが「安息時間」でした。安息時間は大きく分けて「日曜・祝日」と「平日の昼と夜(13時~15時・22時~翌朝6時又は7時)」が定められました。日祝の安息時間は前述の「安息日」をもとに定められ、平日昼夜の安息時間は「しっかりと休息を取ることが心身の健康と作業効率向上につながる」という考えが基盤となっています。

深刻な騒音トラブルの対応策として制定されたのが安息時間(イメージ)

 ドイツは連邦制の国家であり、16の州で構成されています。はたして全国民がこの制度を守ることは可能なのでしょうか?「以前は全時間帯を対象にドイツ全土の法律で定められていたのですが、現在は各州で文化や生活が異なるため同じように規制するのは難しくなりました。そのため、日曜・祝日は連邦州の法律、夜は州の法律、日中の規制は各自治体や住宅単位の規則で……というように、それぞれの規則が定められています」とヘルフェンサンカクは説明。州や自治体、各マンションによって守るべきルールは微妙に異なりますが、基本的に安息時間の時間帯では、騒音(生活環境音)を出すことが禁止されています。その上、「夜の安息時間帯の音量は35デシベルまで」といった明確な基準もあるのだとか。

【安息時間 禁止事項の一例】
●ペット犬の鳴き声/あまりにうるさい場合は、訓練所に行かされる場合も。
●シャワー/30分以内の使用は許容範囲。22時以降は使用禁止のマンションもある。
●電動ドリルやハンマーの使用/一般人は安息時間内の使用禁止。プロによる施行は除外される場合もあり。
●掃除機/基本的に使用しない。性能の良い静音掃除機ならOKとされる場所も。
●ホームパーティー/22時以降は音楽を消す。大声で騒ぐことは禁止。騒ぎを続けている場合、近隣住民からの苦情や警察の注意を受けることがある。

シャワーや掃除機など、音の出るものを使う際には時間帯や音量に注意する必要がある(イメージ)

 禁止事項を守らなかった場合は罰金が課せられ、最大で5000ユーロを支払う必要があります。さらに警察からの注意を1回受けるだけでも50~100ユーロの罰金が課されるそうで、かなり厳格な様子。ですが、ドイツ人は幼い頃から「今は安息時間だから静かにしなさい」と言われて育ってきたため、ごく当たり前の習慣として浸透しているのだとか。一方で、10代~20代の若者層のなかには規則を守らない者もいるため、若者が多く暮らす地域と年配者が多く暮らす地域ではルールの浸透度合いは異なるそうです。

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 ヘルフェンサンカクのリサーチによると、「下階の住人から『何時何分に犬が吠えた』という事細かな苦情の紙が貼られた」「ドイツ人の友人が小学生だった頃、日曜日に公園で遊んでいたところ年配の人から怒られた」など、安息時間にまつわるエピソードは事欠かないようです。一方で、赤ちゃんの泣き声はいくらうるさくても苦情がこなかったり、一戸建ての住居なら夜中に洗濯機を回しても問題が無いそう。明らかに他人の迷惑になる事はしっかり取り締まりながらも、ルール一辺倒にならず状況に応じて柔軟に対応する姿勢は見習いたいものですね。

(取材・文=つちだ四郎)

赤ちゃんの鳴き声には寛容。騒音に厳しいルールとはいえ、優しさも持ち合わせている

◆ヘルフェンサンカク
住所 224-0066
神奈川県横浜市都筑区見花山1−30 3F
問い合わせ先
公式サイト

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