数年前に比べてサブスクの動画サービスが充実し、映画館やレンタルサービスを利用しなくても手軽に安価で映画を観ることができる時代となりました。筆者も2つのサブスク動画サービスに登録しており、週に2〜3本ほどの映画を鑑賞しています。
そんな中で、ずっと悩みとしてあるのが洋画を観ている際に「外国人俳優の顔の見分けができない」ということです。例えばクライマックスで「まさかあの人物がここで登場!?」みたいなシーンでも、「誰だっけ?」となってしまうことがしばしば。調べてみると同じような悩みを抱えている方が結構いるようです。
では、なぜ外国人の顔は見分けにくく感じるのでしょうか。顔と表情の研究の第一人者である中央大学・山口真美教授に話を聞きました。
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日本人にとって外国人の顔を見分けることが難しいのは「他人種効果」という現象によるものだそう。山口教授によると、「他人種の顔よりも自分と同じ人種の顔のほうが認識しやすく記憶しやすいというのが他人種効果です。日本人が外国人の顔を見分けにくいのと同様に、外国人にとっても日本人の顔は見分けにくいのです」とのこと。
ではなぜそのような現象が起こるのでしょうか。その理由について、山口教授は「人は生きていくために、自分の周辺の人の顔を識別することが必要です。そして、日本人であれば基本的に日本人の顔をたくさん見て育ち、日本人の顔の特徴に合った識別が行えるようになります。しかし、あまり接点を持たない他の人種は見分ける方法が訓練されていないので識別しにくくなります。同じ特徴を持つ人種を正確に見極められる能力がある一方で、識別可能な範囲は狭まってしまうのです」と説明します。
外国人の顔を見分けるのが難しいのは人の仕組み上、仕方がないということはわかりましたが、訓練などにより見分けられるようにはなるのでしょうか? これについて山口教授は「興味を持ち、名前と顔を覚えようと繰り返すことで可能です」と回答。
「人は生きていくなかで必要に迫られ、仕事の人や学校の同じクラスの人など多くの顔と名前を一致させ覚えていきます。必要や興味があれば見分けることは可能であり、例えば洋画であればストーリーだけでなくその俳優自体を好きになり興味を持ちながら観る、ということを繰り返し訓練すれば見分けられるようになっていきます」(山口教授)
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山口教授によると「年を取り若いアイドルの顔の見分けがつかない」なども同様に、自分と関係がなく興味を持っていない遠い存在なのが理由とのことでした。
(取材・文=宮田智也)
◆山口真美教授の著書『自分の顔が好きですか?――「顔」の心理学』(岩波ジュニア新書)