野球ファン、特に阪神ファンの間で知らぬ人はいないと言っても過言ではない「阪神園芸」。甲子園で高校野球・プロ野球が行われる際、大雨の後に試合が続行できないほど悪化したグラウンドをプレー可能な状態にする“神整備”はもはや伝説級。とはいえ、野球がオフシーズンに入るとグラウンドはどうなるのでしょうか? 阪神園芸株式会社の加納有優さんに話を聞きました。
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加納さんによると、オフの間もグラウンド整備は行われるのだとか。
「オフシーズンは芝生や土、機械の整備などをしています。球場が使われる時期にベストコンディションに仕上げるためです。1月から2月末にかけてはグラウンドを畑のように掘り起こして撹拌させ、1ヶ月半かけてゆっくり土を固めるという作業を行っています。そうすることで、下層は弾力があり上層は適度な硬さのある良いグラウンドが出来上がります」(加納さん)
阪神園芸の仕事は球場内だけにとどまりません。球場のシンボルである、外壁をぐるりと取り囲むツタの管理も仕事のひとつ。
「1924年の球場の設立から植栽が始まったツタの壁は2006年の球場リニューアルに伴い伐採されました。2009年にツタの再植栽がスタートし、阪神園芸の施設管理部が世話をしています。生命力がありそうなツタですが、実は繊細な植物。夏場の水の管理が重要なんです。タンク車とホースを使って人力で水やりをしながら鳥などに茎を千切られていないか、虫がついていないか、窓や電気機器にツタが絡んでいないか……など注意深く点検しています」(加納さん)
そもそも、阪神園芸株式会社は甲子園のグラウンド整備だけを行っているわけではありません。
同社の事業内容について、加納さんは「阪神園イコール甲子園のグラウンドキーパー、と認識している方も多いかと思いますが、私たちの主な事業は『総合緑化』です」とした上で、「具体的には、造園緑化・屋上緑化や壁面緑化などの特殊緑化・室内緑化・緑地の維持管理・公園施設等の運営管理に携わっています。私が所属している『FM事業部』では、公園施設の管理運営・賑わい創出を目的としたイベントの実施・施設の広報など、幅広い業務を行っています」と説明。現在、同社が管理を行っている尼崎城や阪神尼崎駅前の中央公園をはじめとした周辺エリアで、尼崎にゆかりの深い漫画作品「落第忍者乱太郎」とコラボしたリアル謎解きゲームも実施しているのだそう。
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加納さんは同社の今後について、「甲子園球場の整備だけではなく、総合緑化事業会社として他にも幅広く事業を行っていることを知っていただけるよう励んでいきたいです」と話していました。
(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2024年11月6日放送回より