【橋本】 最近レコード集め始めていて、こないだ淳子さんの初ライブアルバム『16才のリサイタル』(1974)を聴いたんですが、その頃に比べるとずいぶん大人っぽくなってますね!
【中将】 もうデビューして5年くらいたってますからね。ディスコ調のサウンドとセクシーな歌声が相まって、個人的に大好きなナンバーです。
次は超有名な曲です。岩崎宏美さんで『シンデレラ・ハネムーン』(1978)。
【橋本】 TikTokやYouTubeでみんな踊ってますね! あとアバンギャルディさんというダンスグループが踊っている動画もすごく話題になっています。きっとディスコ的なダンスとは違うんだろうけど、時代を超えて再ブームを巻き起こしている感があります。
【中将】 ディスコ歌謡みたいにそもそもダンス要素があったほうが、現代的にリメイクしやすいんだろうね。
さて、ここまで筒美さんの曲が3曲続きました。筒美さんは洋楽のフレーズを大胆に取り入れたことで知られていますが、『シンデレラ・ハネムーン』もイントロがドナ・サマー『ワンス・アポン・ア・タイム』(1977)が似ていたり、他にもさまざまなディスコヒットの影響を受けていると言われています。
【橋本】 『シンデレラ・ハネムーン』は阿久悠さんの歌詞もいいし、邦楽と洋楽のおいしい部分がギュッとなってるわけですね。
【中将】 次に紹介するのはディスコ歌謡最大のヒット曲です。西城秀樹さんで『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』(1979)。
【橋本】 たしかにこれは大ヒット! 私たちの年代でもみんな踊れます!
【中将】 僕の頃は学校のイベントとかで踊りましたよ。中学の修学旅行でカナダに行った時も現地の中学生たちとの交流でこの曲を踊りました。
【橋本】 すごい! 世界中みんなが知ってるわけですね。この曲は洋楽のカバーですよね?
【中将】 はい、原曲はアメリカのディスコグループ、ヴィレッジ・ピープルが1978年12月にリリースした『Y.M.C.A.』。秀樹さんは渡米した際にこの曲を知り、翌年2月21日にカバーをリリースしています。
【橋本】 めちゃくちゃ早いじゃないですか!
【中将】 業界のスケジュールを無視した臨時発売だから、秀樹さん自らレコード工場に出向いて従業員たちにお礼したそうです。ヴィレッジ・ピープルはゲイカルチャーのパロディーグループだったので、初めスタッフは反対したようですが、結果オリコン・ウイークリーランキング5週連続1位。人気音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS)で同番組史上唯一の満点(9999点)を記録する大ヒットになりました。
【橋本】 秀樹さんには絶対に売れるという確信があったんですね! たしかにインパクトあるし歌も踊りもすごく覚えやすい! 名曲ですね。
【中将】 さて、ここまで有名な方の曲やヒット曲ばかりご紹介してきましたが、もうちょっとマイナーなシーンの中にも数々のディスコ歌謡の名曲があります。
その1つが、ラブマシーン『お前は夢の中』(1981)。ラブマシーンは北九州・小倉のディスコのハコバンからデビューしたロックバンドです。
【橋本】 ハコバンって固定のハコで毎日のように演奏しているバンドのことですよね。ビートルズも初めはそうだったとか。
【中将】 はい、今ではほとんど残っていないシステムですが、昭和は街ごとにそういうハコバンがたくさんいて、ダンスミュージックやBGMを演奏することで生活しているバンドマンがたくさんいたわけです。そういうシーンから出てきたバンドだからか、これまでの筒美さんの曲とかにくらべると、若干あか抜けない昭和感がありますよね。だが、それがいい!