劇作家・菱田信也 多数の受賞作品やテレビドラマ手がけるも、震災・自己破産・コロナ…波乱万丈の人生 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

劇作家・菱田信也 多数の受賞作品やテレビドラマ手がけるも、震災・自己破産・コロナ…波乱万丈の人生

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 2000年、近松門左衛門とゆかりのある尼崎市が、新たな演劇作品の発掘・劇作家の育成を目的として「近松門左衛門賞」を創設。菱田さんが、作品『いつも煙が目にしみる』を応募したところ、見事、「第1回近松賞優秀賞」を受賞した。

 2005年、選考委員を務めた宮田慶子氏から依頼を受け、同作品を改訂した『パウダア~おしろい』が、兵庫県立芸術文化センターのこけら落とし公演シリーズとして上演された。

 しかし、そのころ菱田さんは、劇団の負債や家業の倒産が重なり、自己破産を余儀なくされる。

「(『パウダア~おしろい』は)震災を描いた作品ですが、10年を経てなお、僕自身や家業も震災の影響を受けていました。自己破産が受理されて1週間後ですかね、この作品がなんと、第57回読売文学賞戯曲シナリオ部門を受賞したという連絡がきたんです。すぐに弁護士に『これはちょうだいしていいの?』と電話しました(笑)」(菱田さん)

 以降、地方自治体の経済破たんと行政職員の取り組みを描いた小説『再生の町』(NHK土曜ドラマとしても放送)やテレビドラマの脚本も手がけてきた菱田さん。2017年には、「神戸三宮シアターエートー」の芸術監督に就任する。

 シアターエートーは、かつて大阪芸術大学舞台芸術学科に存在した「A棟」というプレハブ小屋が名前の由来で、医療法人がオーナーを務める座席数100席ほどの小劇場だ。

「神戸三宮シアターエートー」
「神戸三宮シアターエートー」劇場内

 OSK歌劇団による1か月公演や落語会など、さまざまなコンテンツを運営していた菱田さんを、3度、厄災が襲う。

「今度はコロナです。2019年に『神戸市文化奨励賞』を受賞した。『この劇場を立ち上げた経緯を本にしましょう』というありがたいご提案をいただいて、ニコニコしながら本を出した翌日に緊急事態宣言で本屋がぜんぶ閉まっちゃって。ただ、演劇の配信など、これからのシステムを考える良い機会にはなりました」 (菱田さん)

 コロナ禍について振り返った菱田さんの言葉に、平田さんも「(コロナ禍が)あんなに長く続くとは思いませんでしたよね。震災やコロナといった時代の転換期に、演劇人は鍛えられます」と言葉を続けた。

「拠点はこれからも神戸ですか?」という平田さんの問いに、菱田さんはこう答えた。

「神戸の人間って、“ゴリゴリ”できないんです。(神戸は)山もあって海もあって何でもあるまちだから、東京で数日泊まって仕事をしても、やはり神戸に帰ってきちゃう。売れたら大阪、そこから東京という、“演劇すごろく”みたいな発想が育ちにくい土地柄なんだと思います。だからこそ、文化圏をしっかり作る必要がある。シアターエートーがそういうスポットになってくれたら、と思っています」(菱田さん)

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年1月9日、16日放送回より

脚本家・舞台演出家の菱田信也さん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

◆菱田信也作・演出<最新作>
燃えよhishidas vol.10 『ナオミの夢 大再々演』【詳細ページ】

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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp

『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。

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