人気のアクセサリーであるピアスは「耳に穴を開ける」という装着方法が最大の特徴です。そのため日本においては、子ども(学生含む)のうちは両親から禁止されたり校則で禁止されている学校もあるとか。しかしブラジルでは、赤ちゃんの頃からピアスをつける習慣があるのだとか。
ブラジル人を対象とした日本語教室やブラジルセミナー、ブラジルの公用語であるポルトガル語教室などを展開する「H&Aコンサルティング」の星淳子さんにブラジルのピアス事情を教えてもらいました。
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赤ちゃんがピアスをつけることについて、ブラジルでのポピュラー度合い聞いてみると「かなり一般的」と星さん。「特に女の子は早い段階でピアス穴を開けることがよくあります。ブラジルにはファッションや外見を重視する文化的な背景があり、可愛さやおしゃれさを強調するために行われます」と解説。
ファーストピアスには、ゴールドの小さな丸いピアスや真珠・宝石が選ばれることが多いのだとか。両親のスタイルや文化的背景などによって選ばれるピアスは異なりますが、「赤ちゃんのピアス選びで大切にされていることは、アレルギーのリスクを最小限に抑える素材の見極め」と星さん。おしゃれを大切にしつつも、やはり子どもの快適さと安全性が最優先とのこと。とはいえ、そもそも子どもへのピアス装着の習慣がない家庭も一定数存在するとのことでした。
「赤ちゃんにピアス」が始まった正確な時期は不明なものの、少なくとも20世紀初頭には存在していたことが確認されています。ポルトガルやスペインの影響を受けた南米の文化ではピアスをつけることは古くから一般的なものだったとか。ブラジルでもこの文化が受け継がれた結果、習慣として定着したようです。
さて、ピアス装着の目的が「外観を強調するため」と聞くと、“おしゃれを楽しむ装飾品”というイメージを持ちがち。しかしながらブラジルではピアスには社会的・宗教的な意味があり、特に先住民のコミュニティやアフリカ系の宗教では儀式的な意味を持つことも。
「赤ちゃんや小さな子供にピアスをつける意味はすべての部族で共通していません。部族によって意味が異なります。『精神的な保護』や『先祖との繋がり』を意味する部族もあれば、『社会的地位』『コミュニティ内での役割』を持つ部族もあるそうです」(星さん)
赤ちゃんにピアスをつける行為はファッションとしてだけでなく、時に宗教的・文化的な背景や家族間の価値観を反映した深い意味が込められている場合もあるのです。
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星さんによると、先住民だけでなくブラジルの大都市に住む多くの女性にとってもピアスは個性やアイデンティティを表現する手段として浸透しているとのこと。ピアスはいまやブラジルの多様な文化を反映する重要なアイテムのひとつ。赤ちゃんから大人まで世代を問わず身につけており、単なる装飾品以上の意味を持っているのです。
(取材・文=つちだ四郎)