では、具体的なしつけとは、どういうものでしょうか。犬伏さんは、「おすわり」「伏せ」「待て」「来い」と、人間が犬を横につけて一緒に歩く「脚側歩行」を、基礎の5つの動作としてピックアップ。これらがしっかりできれば、「あとは応用になる」とのことです。ちなみに、「お手」「おかわり」「ジャンプ」については、犬伏さんいわく、「これは芸です」。
さらに、犬伏さんは、ゲージなどの狭く囲まれた場所=クレートの中に静かにいることができるようにする「クレートトレーニング」も、重要なことだと語ります。
「避難所にいくと、犬猫にそれなりの空間を与えられるのは難しいので、クレート(狭く囲まれた場所)の中、ゲージの中で、静かにいてもらうようにすることが大事。いきなり入れられると、『狭い』『窮屈』『なんでこんなところに入れられるの?』と、泣きわめいたり暴れたりすることがあり、そうなると他の被災者に迷惑がかかってしまう」
一見、狭いところにいる難しさも感じますが、犬伏さんは、「いきなり入れると暴れる個体もいますが、ひと粒、ふた粒のエサをクレートの中に投げ入れてみる……そうするとエサを追いかけてクレートの中に自然と入る=遊びますよね。そのように、クレートの中に入る恐怖心を失うようにしてもらえれば、今度はそのなかでご飯を食べてもらうとか、慣らせていくことができると思います」と、アドバイスを送ります。
加えてもう1つ、「常に私たちも声を大にして言っている」と犬伏さんが強調するものがあります。それは、避難時だけでなく、普段から、もしものときの預け先を確保すること。それも、1か所ではなく、“近く”と“遠く”の2か所いるといいます。
「局地的な災害の場合は、早い時間で自分の生活設計をし直して、迎えに行けますよね。それは距離が近い方がいいと思います。ところが、大規模な災害の場合は、ライフラインの復旧など自分の生活を確保するまで時間がかかりますので、集中してその作業をするためには、(遠くの)安全な場所に預けることで、飼い主の安心も担保できるのでいいと思います」
最後に、犬伏さんは、「ペットは飼い主なしには生きていけません。まず飼い主自身の安全を確保できるよう、日頃からの屋内の動線の確保に努めましょう。また、避難所には多くの被災者が集まります。避難所でペットが嫌われ者にならないよう、基本的なしつけと健康管理は徹底しておきましょう。避難所で人とペットが同じ空間を共有できる保証はありません。クレートトレーニングはどの犬猫にも可能ですので、今日からでも始めましょう。また機会があれば、同行避難訓練に参加してください」と、改めてペットの防災対策について、飼い主にメッセージを送っていました。
なお、兵庫県動物愛護センターでは、2月15日(土)に、「ペット防災を学ぼう」というイベントが行われます。詳細については同センターの公式サイトに掲載されています。
※2025年1月17日放送 ラジオ関西 震災特別番組『±30(さんじゅう)~経験を今、未来(あした)へ~』より