夜回り先生・水谷修氏の原点 教員とは何か?“みんな仲良く”の方針に疑問も、貫き通す「尊重」の信念 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

夜回り先生・水谷修氏の原点 教員とは何か?“みんな仲良く”の方針に疑問も、貫き通す「尊重」の信念

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 “夜回り先生”として広く知られる児童福祉運動家の水谷修氏が、シンガーソングライターの川嶋あいさんがパーソナリティを務めるラジオ番組『明日への扉〜いのちのラジオ+〜』(ラジオ関西)に出演。教育者としての使命と覚悟について語りました。

写真左から 水谷修氏、川嶋あいさん
写真左から “夜回り先生”こと水谷修氏、番組パーソナリティのシンガーソングライター・川嶋あいさん

 水谷氏は横浜市立港商業高校(2005年4月に閉校)で教壇に立っていた頃、一人の女子生徒を救出した事件をきっかけに、教育者として何を大切にすべきか、その使命について深く考えるようになりました。

 事件が起きたのは卒業式を2日後に控えた3月1日。副担任を務めるクラスの女子生徒から水谷氏の自宅に一本の電話がかかってきました。『厚木のホテルに連れ込まれた』という緊急の助けを求める内容です。水谷先生はすぐに警察に連絡を取り、生徒の保護に成功。しかし翌日、学校で開かれた職員会議では『学校の名誉を傷つけた』という理由で、その生徒の退学処分が提案されました。水谷氏は「そんなバカな話があるか。黙って乱暴されればよかったのか」と強く反論しましたが、先生同士での多数決により、2票差で退学が決定されてしまいます。

 不当だと、この決定に納得がいかなかった水谷氏は、当時の社会科主任から「(生徒の)入学と卒業は校長が独自で決められる。だから校長をひっくり返せれば卒業させられるぞ」と助言を受け、校長に直談判を試みます。しかし、校長はその生徒を卒業させる代わりに「お前はこの学校から出て行ってもらう」と条件を告げ、水谷氏は養護学校への異動を余儀なくされました。

 番組では、いじめ問題について独自の見解を示しました。水谷氏は、いじめを単なる子どもの問題として片付けてはならないと強調します。「例えば学校で仲間を殴るとか、仲間のものを隠すとか盗るとか、あるいは死ねと言うとか。これはいじめじゃないよ。犯罪だよ」と述べ、「してはいけないことはしてはいけないんです。法的に裁かれるべきものは、矯正教育という形で分かってもらえるように教育をするべき」と、青少年に関しては適切な矯正教育を通じた更生が必要と訴えました。

 また、いじめ問題の解決には、学校や教師の姿勢を見直す必要があると水谷氏は指摘します。特に現代の日本の学校現場でよく見られるという「みんな仲良く」との指導方針に疑問を投げかけました。「仲良くしなさい」と無理強いすることで、かえって子どもたちにプレッシャーを与え、孤立やいじめを助長する場合があるといいます。

「1年かけて仲良くさせるのは教員の仕事。それが学校の仕事なのに子どもらに求めるから間違えてきてる」と話す水谷氏は、「『みんな仲良く』なんて、嘘っぱちだからやる必要はない。ただ、礼儀はわきまえろ。陰口を言ったり傷つけるようなことはやめて、お互いを尊重した上で、自分たちで好きなようになりなさい」と指導していることを明かしました。

 水谷氏はいじめによる心の傷を“静電気”に例えました。静電気に触れた後、もう一度同じ場所に触れるのが怖いように、「何回も何回も繰り返されていったら心にものすごい傷が残る。その結果、人を信用できなくなり、みんな自分を傷つける人間に見えてきて、心を閉ざしていくわけです」と語り、このような心の傷を癒すためには、信頼できる誰かが寄り添い、時間をかけて関係性を築いていく必要があると水谷氏は強調しました。

 最後に水谷氏は、いじめや引きこもりで悩みを抱える人々に向けて「絶対に立ち止まらないでほしい。今まで何百回大人に裏切られても、もう1回信じ直しをして、触れ合ってみてほしい。世の中悪い奴はたくさんいる。でも悪い奴の何百倍も素晴らしい人間はいるけども、君たち悩んでいる人が一歩前に出ないと、外に出ないと出会いは来ない。人は出会いで変わるんです。その出会いは自分で求めなきゃならない。最初の一歩は」と語り、社会復帰への第一歩を後押しする言葉で締めくくりました。

※ラジオ関西『明日への扉〜いのちのラジオ+〜』2025年2月2日放送回より

◆『明日への扉〜いのちのラジオ+〜』(パーソナリティ:川嶋あい)◆
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