平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、兵庫県立尼崎青少年創造劇場(通称:ピッコロシアター)広報の古川知可子さんが出演。同施設におけるこれまでの教育活動や人材育成、バリアフリーへの先進的な取り組みについて語った。
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1978年に開館した兵庫県立尼崎青少年創造劇場は、青少年(アマチュア)の自由な創造活動を促進し、県民文化の高揚を図ることを目的に設立。1998年には、演劇専門誌のプロの演劇人が全国主要劇場を採点するという特集で総合1位の評価を受け、特に、施設のアクセス性や使いやすさが高く評価された。
演劇学校や舞台技術学校の設置を通して人材育成を進めるなかで、1994年には全国初の県立プロ劇団を設立。昨年、設立30周年の節目を迎えた。演劇学校・舞台技術学校の卒業生も2800人を超え、卒業後も地域の文化活動に参画するなどの好循環が生まれている。
古川さんと平田さんの出会いは20年前。全国の公立文化施設を横断する演劇企画で、俳優1200人のオーディションが実施されたときのこと。古川さんは、当時をこのように振り返った。
「オリザさんは『(応募者)全員に会います』とおっしゃるんですよ。そのときに初めてお仕事ぶりを拝見することになったのですが、『人間なのかな?』と(笑)。舞台に教室を再現して、オリザさんに対話を考える授業をしていただきました。いまでこそ、コミュニケーション教育は全国に広まっていますが、阪神間の先生方にたくさん参加いただいた思い出深い事業でした」(古川さん)
近年、同施設におけるバリアフリーへの先進的な取り組みにも注目が集まっている。2015年から導入した視覚障害者向けの音声ガイドは、上演中リアルタイムで劇団員自らがナレーションを担当する独自のもの。
当初は福祉放送のアナウンサーが担当したが、3年目からは劇団員が自ら台本をつくり、舞台装置の状況や俳優の表情・位置関係などの解説も交えながら実施したところ好評を博した。
「リアルタイムで届けるので、ガイド役の劇団員もセリフを噛んだりする。すると、『生なんですね!』と逆に感動されます(笑)」(古川さん)
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こうした取り組みのほかにも、震災時の演劇による被災者支援活動、劇団員による在留外国人の地域コミュニティ参加支援ワークショップなどが評価され、2024年末には内閣府より『バリアフリーユニバーサルデザイン推進功労者表彰』を受賞した。
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昨年の豊岡演劇祭で手話通訳付き公演を実施した平田さんも、通訳者を舞台演出の一部として組み込む革新的な試みを行っている。
「手話通訳も俳優の一部として一緒に動いていただきました。これまでの手話通訳付きの舞台というのは、同時手話通訳が舞台の端でやるのが普通だったと思うんですけど、最近は演者のそばで行います。これには、どうしても演出・稽古が必要なんです。手話は正面から見るようにできているので、俳優の動きに合わせる場合、角度をどのぐらいにするかを、手話監修(ろう者)の方にチェックしていただきながら、何度も繰り返して作ります。当事者に入っていただくと新たな発見があります」(平田さん)