生まれも育ちも神戸市中央区でサブカル郷土史家の佐々木孝昌が、北区出身で落語家の桂天吾と、神戸のあれこれについてポッドキャストで語る『神戸放談』(ラジオ関西Podcast)連載シリーズです。
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テレビや雑誌などで神戸市を紹介する決まり文句といえば、「山と海に挟まれた、東西に細長い街」ではないだろうか。これは、神戸に住む者がちょっぴり自慢げに、市外の人に対して神戸を紹介する時、好んで使うフレーズでもあるはず。

しかし、よく考えるとおかしくないだろうか。なぜかって?山のその向こうにある北区と西区を含んでいないからだ。世間一般では、北区と西区を神戸と認知していないと言っても過言ではないだろう。もちろん中央区出身の僕もだ。そう、六甲山系より南の旧市街に住む神戸っ子にとって、北区と西区は神戸ではないのだ。北区民との飲み会の帰りに「何で帰るん?」と聞いた時、「神鉄」と答えられると、比較的早い時間でも、「田舎やのに終電大丈夫か?」と思わず口走ってしまう。地方ローカル線のイメージだ。
その北区出身の落語家・桂天吾君に聞くと、両区民は神戸っ子でありながら神戸っ子では無いという謙虚さがあるという。そんな北区民の天吾君にとって許せないのが垂水区だという。神戸じゃないと言われながらも、北区には日本三古湯の1つとされる全国的に有名な有馬温泉があるが、垂水区は何も無いのに六甲山系以南というだけで神戸面するなとの思いがあるそうだ。
天吾君にとっての神戸とは、北区・西区・垂水区以外。ちょっぴりセレブな東灘区には憧れもあるという。僕の場合、神戸は須磨区から灘区の間。垂水は明石文化、東灘は芦屋文化のイメージだ。また、中央区といっても旧生田区の出身なので、合併した旧葺合区とは一緒にせんといてという気持ちもある。同じ神戸の中でも住む区によって、仁義なき戦いがあるのだ。
京都の人は、「洛中以外、京都とは認めない」とよく言われる。神戸もこの感覚に近しいものがあるのだろう。平清盛が平安京から福原京に遷都したことを思うと、京都イズムが神戸っ子にも入っているのかもしれない。
※ラジオ関西Podcast『神戸放談』#1 北区と西区は神戸じゃない!? 神戸市民にヒエラルキーはあるのかより
(文=サブカル郷土史家 佐々木孝昌)
