厚労省が2024年7月に公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」の中で、2040年度には介護職員が約57万人不足するという予想が発表された。介護業界では人手不足が深刻さを増すが、実際に介護の現場で働く人々はどのような思いで業務についているのか。日々の励み、仕事を続けてよかったと思う瞬間、働くうえで大切にしていることなど……話を聞いた。
住宅型有料老人ホーム「藍の郷」(明石市)を運営する有限会社コーワ(以下、コーワ)の取締役・下村正樹さんは、利用者を車で送り迎えする時間に密かな楽しみを見出している。野球好きの利用者がおり、ラジオで野球中継を聴きながら車の中で高校野球や阪神タイガースの話をしているのが楽しいという。「介護は大変なイメージが先行しがちですが、こうした日常の小さな交流が私たちにとっても大きな励みになるんです」(下村さん)。
コーワが手がけるデイサービスセンター「紅葉」の管理者・蓮池知子さんは「レクリエーション活動を充実させています」と話す。体操やゲーム、創作活動など、さまざまなプログラムを用意しており、特に最近ではオンラインでのレクリエーションに力を入れる。オンラインを活用することで遠方にいる講師とつながり、リアルタイムで体操や歌、アートなど普段はなかなか体験できないようなプログラムを行うことが可能になったそう。
そして、レクリエーションや体操には職員も積極的に参加し、利用者と一緒に楽しむことを心がける。「職員が楽しんでいる姿が、ご利用者様の安心や喜びにつながると考えています。これからも皆さまが笑顔で過ごせるデイサービスを目指して、スタッフ一同全力でサポートしてまいります」(蓮池さん)。
訪問介護ステーション「紅葉」の責任者、山口佳代さんによると、最近では高齢の親を介護している男性からの相談が増えてきているという。「男女問わず多くの方々がお勤めを続けながら高齢の方の介護をされており、大変な毎日を送られています。そうした方々の負担を少しでも軽減し、安心して介護に取り組めるようなサポートを提供しています」と話した。
以前、これまで自宅に週1回の訪問をしていた人が入居することに。不安な様子だったが、なじみのある訪問介護員の顔を見つけたときにとても喜んでくれたそうで、山口さんは「その瞬間、この仕事を長年続けてきて良かったと思いました」と笑顔で語った。
「藍の郷」施設長の宮下一実さんは、同施設で働くうえで大切にしていることを三つ挙げる。
一つ目は、「業務内容にゆとりや余白を残すこと」。業務に追われてしまうと感情的な対応になってしまうこともあるため、ゆとりを持つことで丁寧なケアにつなげていく。
二つ目は「無理をしないこと」。体調が悪いときは休み、悩みごとは一人で抱え込まず誰かに頼るということで、職場のストレスを少しでも軽減するように努めている。
三つ目は、「仕事を楽しいと思える環境づくり」。職員が笑顔で仕事をすることで、場の雰囲気が和んで利用者にもいい影響が伝わる。これら三つのことを大切にすることで、ケアの質の向上を目指しているのだという。
最後に下村さんは「これからも地域の皆様に寄り添いながら、楽しく温かい介護を提供していきたい」と締めくくった。
※ラジオ関西『三上公也の朝は恋人』より





