また、4年前にスタートアップを立ち上げ、CGのアバターをコンビニや駅など、さまざまな場所で使ってもらう事業も行っている。今回、パビリオンの入り口案内にも使用されており、遠隔で操作するのは自閉症の子どもたちや高齢者施設、精神科病院の利用者らだ。
「社会参加できず、症状が悪化する方が結構おられる。パソコン画面を通してボタンを押して挨拶するだけなのですが、精神的なケアには効果的で、担当のお医者さんからは『かなり改善するのではないか』といわれています。アバターを通じて社会とつながり、対価も得られる。“これから50年で日本の人口は最低3割減る”といわれているが、寂しい社会にはしたくない。そこに使われるのが、AIやロボット技術だと考えます」(石黒氏)
2007年、『ロボット演劇』でタッグを組んでいた石黒氏と平田さん。そのころを、平田さんはこのように振り返る。
「(石黒さんと)出会った瞬間からあの信頼関係ができたのは、『人間を作る』のではなくて、『人間らしく見える』というのはどういうことなのか、ということを2人とも考えてきたから。いつも、『石黒さんかっこいいな』と思うのは、『自分は工学者だから、君が人間とは何かを定義してくれたら、その通り作ってあげるよ』と学生にいっていて。要するに、人間とは何かがわかっていないのに、人間らしくするということ自体がおかしい。人間らしいということ自体が人々のある種の共同幻想みたいなものであったり、既成の概念であったりする。ロボット演劇というのは新しい領域。世界でもまだ誰もやっていないことを私たち2人でずっとトップで走ってきましたので、やっぱりもうちょっと極めたいなという思いがありますね」(平田さん)
先月上梓された著作『いのちの未来2075~人間はロボットになり、ロボットは人間になる』は、本パビリオンができるまでの経緯や逸話が収録されている、必携の書だ。
石黒氏の次の研究目標は、パビリオンでも描かれているように、「自分の記憶」をアンドロイドに引き継ぐ技術に挑戦することだ。
「できるかどうかわかりませんが、研究者としてチャレンジしたいと思っています」(石黒氏)
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年6月12日放送回より
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





