桑垣さんが重視するのは、関係人口の概念。地域を離れた若者たちが夏祭りや正月に帰省する文化に着目し、自身の経験も踏まえ、これらの人々と地域をつなぐ緩やかな仕組みづくりに力を入れている。特に、地元の子どもたちとのつながりを大切にし、将来的な地域の担い手育成を視野に入れている。
地域の現状は厳しい。桑垣さんが住む集落は、80代が中心で、彼自身が最年少の50代。人口減少と高齢化は深刻といえる。しかし、悲観していない。むしろ、この状況を可能性として捉えている。
「地域の学校統廃合を前向きに捉え、小規模校だからこそできる教育の可能性も探ってみたい。自然学習はもちろん、ITを活用した教育や、オリザさんが実践されている地域の特性をいかした演劇教育にも興味があります。先日、町内の信号機を数えてみたら7機しかなくて。交通系の実証実験もできそうです」(桑垣さん)
これを受け、平田さんもこのようなエピソードを披露した。
「但東町で講演をした際、御礼にカブトムシをいただいた(笑)。うちの子は喜んで飼って、どんどん子どもが生まれて。都会の子からしたらもう、天国ですよね」(平田さん)
桑垣さんの将来的なビジョンは壮大。「5年以内に実現したい」と語る『里山テーマパーク』は、休耕地を活用し、自給自足的なコミュニティを創出。「訪れる人々が食事や宿泊もできる新しい地域の形を提案したい」と意欲的だ。
「但東町は、シルク温泉やTKG(但熊)、出石はそばが有名ですが、観光(のための宿泊)はほぼ城崎に集中しています。豊岡を楽しんでもらうための“目的地”になることが必要」(桑垣さん)
桑垣さんは、“民間の事業が継続的に成立すること”を最大のミッションと考え、補助金頼みではない自立した地域づくりを目指している。InstagramFacebookを中心 としたSNSを通じて活動を発信することで地域の魅力を伝え続け、共感者は徐々に増加している。
将来的には、音楽事業に携わってきたスキルを地域の活性化にいかしたいと考えている
地元住民が「何もない」と話す地域に、可能性の種をまき育てようという試みははじまったばかり。
「僕ひとりの力では絶対に無理なので、たくさんの方に関わっていただきながらですね。若い方がやりやすいようにやっていくという話題をつくるのが大事かな、と思う。8月上旬には『たんとうひまわりまつり』が開催されますし、おくあカフェにも立ち寄っていただければ」(桑垣さん)
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年7月31日放送回より

☆☆☆☆☆
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





