「二十四節気」を知っていますか? 1年を24等分しおよそ15日ごとの節気に分けたものということは分かるのですが、私たちの生活にどのように関わっているのかいまいちピンと来ない筆者。そこで、All About『暮らしの歳時記』ガイド・三浦康子さんに詳しく話を聞いてみました。
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二十四節気の生い立ちについて、三浦さんは「様々な生活や農作業で季節を把握するために、太陽の動きをもとに中国で作られたもの」と説明します。

「季節には太陽の動きが影響します。日本の旧暦は、月の動きに太陽のめぐりを取り入れた『太陰太陽暦』なので、年ごとに季節と月日にズレが生じ季節が把握しにくいという欠点がありました。そこで、太陽の動きにもとづく中国の二十四節気を取り入れて、季節の目安にしたそうです」(三浦さん)
新暦は太陽の動きに基づいた「太陽暦」であり、本来は二十四節気と相性がいいとされているものの、どうしても「季節のズレ」は感じてしまいます。ちなみに今週8月7日(木)は二十四節気のひとつ「立秋」にあたり、暦の上では秋が始まります。ですが我々の体感的には「がっつり夏」ですよね? なぜこのような相違が生まれるのでしょうか。
「旧暦に制定されたものだから新暦とズレる……という誤解を一部ではされているようですが、明確な理由は2点挙げられます」(三浦さん)
【理由その1:二十四節気が古代中国で生まれたから】
「当時、文化の中心だったのが黄河流域。そこの気候をもとにして二十四節気は作られました。ですので、中国の“大陸性気候”と日本の“島国気候”ではどうしても違いが生じてしまうのです」(三浦さん)
【理由その2:光の変化と気温の変化には差がある】
「太陽の動きをもとにしているとはいえ、太陽の“光の変化”が地球に届き、実際に“気温の変化”として現れるまでには2週間ほどの差があります」(三浦さん)

二十四節気を活用しているにも関わらず、日本に合わせたカスタマイズがなされなかった事も気になります。これに関して、「実は2011年頃にその動きはありました」と三浦さん。「日本気象協会などで“日本に合った文言”を制定しようと議論されたのです。ですが『二十四節気をもとにした行事や風習が多い』『古くから俳句や文学で使われている』など、変えてしまうと日本文化の基本となる部分が壊れてしまう……という判断に至り、結局変更はされませんでした」と明かしました。
その上で三浦さんは「文言はそのままでも問題はない」と述べます。例えば立秋は「1年の中で最も暑い『大暑』から『立秋』に移ること。秋が立ち上がって育っていき、少しずつ涼しくなっていく」というのが本来の意味。決して「秋が始まり、立秋を境に涼しくなる」ということではありません。このように二十四節気の意味を正しく理解しておけば、季節の流れをきちんと捉えることができるのだとか。
とはいえ、日本ならではの言葉もちゃんと生まれています。「八十八夜」は立春から数えて88日目を言いますが、この時期になると霜が降りなくなるため農作業の目安にします。また、立春から数えて210日目は「二百十日」。稲が開花する大事な時期に台風が来襲しやすいため、警戒するタイミングとされています。このように日本の気候風土に合わせ分かりやすい言葉で表現されたものを「雑節」といい、節分・彼岸・土用などもこれに含まれます。2013年には「季節の言葉36選」が作られ、日本の時季に合わせた言葉も制定されたそう。
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昨今の日本は異常気象が影響し、春・秋のない「二季」状態。だからといって二十四節気の存在は“意味が無くなった”わけではありません。農業や文学など、我々の生活を豊かにするものに今でも深く関っているのです。
(取材・文=堀田将生)
●三浦康子さんの書籍
『かしこい子に育つ季節の遊び 楽しい体験が心を豊かにする12か月の「行事育」』(青春出版社)
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