トドの“ハマちゃん”が人間の動きをトレース? 城崎マリンワールドの研究で明らかに【兵庫・豊岡】 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

トドの“ハマちゃん”が人間の動きをトレース? 城崎マリンワールドの研究で明らかに【兵庫・豊岡】

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 今年リニューアルオープンした「城崎マリンワールド」(兵庫県・豊岡市)で飼育されているトドの“ハマちゃん”。海獣でありながら、なんと「人の動きを真似することができる」といいます。ハマちゃんのことを同施設飼育員・佐々木雅大さんに、今後の施設の在り方については運営元である「日和山観光株式会社」営業企画部の今津宏基さんに聞きました。

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「水族館以上、であること」をコンセプトに掲げる同施設は動物たちの生態をしっかり観察できる様々な取り組みをしています。その中のひとつが「トドのハマちゃんの研究」。ここでは“世界最大のアシカ”と言われるトドをオス2頭・メス3頭の計5頭飼育しており、ハマちゃんはその中の一頭です。

トドのハマちゃん(画像提供:城崎マリンワールド)

 2009年にアクアマリンふくしまで誕生したハマちゃん。2011年に発生した東日本大震災の影響で、同年6月に城崎マリンワールドに引っ越してきました。トドも食に対する好き嫌いがあるそうですが、ハマちゃんは何でも食べるそうです。佐々木さんは「中には『これしか食べない! 』と態度に出す子もいて僕たち飼育員が翻弄されることもあるんですが、ハマはその心配が無いので心強いです」と、目を細めます。

 そんなハマちゃんに、興味深い特徴が見られるようになったのは2014年ごろ。「敬礼」と伝えただけで動き始めたことをきっかけに、他の言語でも試してみたところ早々に20種類の言葉を聞き分けられるようになったそう。2016年から本格的に研究がスタートし、広島大学で人の言語を研究している先生にも協力してもらいながら実験的に様々な調査を行いました。2017年に催された全国海獣技術者研究会(全国の飼育員たちが研究を発表する場)で結果を発表した後も、多彩なテーマで研究が続いています。

 そして、今回新たに判明したのが“人の動きを真似ることができる”という事実。佐々木さんが学会発表へ訪れた際に、麻布大学の今野先生より「人の動きを真似る犬がいるんだけど、ハマもできないかな?」と提案を受けたことがきっかけなのだとか。「Do as I Do(私と同じようにしなさい)と犬に伝えて同じ動きをさせるトレーニングをハマちゃんにも試しました。すると、真似るような動作を取ったのです。この結果をもとに、2024年に口頭発表を実施し論文が受理され世に広まることとなりました」。

人の動きを真似できることが分かったハマちゃん(画像提供:城崎マリンワールド)

 ちなみに「人の動きを真似る」という行為は人間以外が行うことは難しいとされていましたが、調査が進み現在ではトド・犬・イルカ・シャチ・大型の類人猿(チンパンジーやゴリラなど)なども可能とのこと。

 同施設を含めた“水族館”について「様々な切り口で研究を実施し分かったことを科学的に発信する場へと進化している」と佐々木さん。論文を書いて終了するのではなく、それを来場者に見て楽しんでもらえるようなイベントを実施したいと意気込みを見せています。「トドは、日本人にとってあまり馴染みが無い動物ですが、実は北海道にも生息している身近な生き物なんです。パワフルで知能もあり、魅力がたっぷり。研究を通じてファンが増えれば嬉しいです」とメッセージを投げかけました。

リニューアルした魚類展示エリア(画像提供:城崎マリンワールド)

 地元との連携が特徴のひとつでもある同施設。今津さんは「ブルーカーボンプロジェクトに取り組んでおり、環境問題にも向き合っている最中。周辺地域では海藻が減少し魚たちの住処にも影響が出ている。漁協やダイバーと協力していきたい」とのこと。続けて「飼育員に各動物の生態などについてどんどん質問してもらいたい。『会話のある水族館』になれば」と話し、しめくくりました。

上空から見た城崎マリンワールド(画像提供:城崎マリンワールド)

(取材・文=長塚花佳)

※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年8月6日放送回より

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