物を探すとき、ふと気がつけば”独り言”をつぶやいていることはありませんか? そんなとき「自分、ちょっとヤバいかも……」なんて悲観しなくてOK。むしろそれによって探し物が見つかるスピードが変わってくるのだとか。一体どういうことなのか、「日本ビジネス心理学会」副会長・匠英一さんに聞きました。

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独り言で探し物が早くみつかるという仕組みを匠さんは次のように説明します。
「経験と言語は結びついています。失敗した瞬間の経験や場所といった『状況』を言葉にして発することで行動を振り返ることができ、連想を沸き起こします。つまり言語によって『抽象的記憶』は『具体的記憶』に変化し、過去を辿ることができるのです」(匠さん)

例えば、財布をどこかに忘れた場合に「椅子に座っていたな」「そのあと洗面所に向かったな」など、事が起こった前後の記憶を言葉にします。するとその時の経験が思い出され、連想となり記憶を引き出すことができるとのこと。

では無意識下の独り言ではなく、意識的に言葉にした方が「より速く思い出せる」ということなのでしょうか?
「その通りです。5W1H(Whenいつ・Whereどこで・Whoだれが・Whatなにを・Whyなぜ・Howどのように)で物事を回想できるため、思い出すスピードは早まします。また視覚・聴覚・嗅覚からも記憶を辿ることができますので、景色やにおいを利用することも有効です」(匠さん)
このことを証明するような実験結果もあります。「陸上」と「水中」でそれぞれ100個ほどの単語をインプットした場合、後者の方が覚えたものを思い出しやすかったそう。
ちなみに、悲しい場面を見ていると楽しい記憶は思い出しにくくなることがあるそうです。「これを『気分一致効果』といいます。同じ環境や感情に身を置くことで記憶が辿りやすくなるのです」と匠さん。

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「記憶・感情は言葉に深く結びついている」ということが分かる取材でした。今後何かを思い出そうとする時は、人の目を恐れずブツブツ言ってみるといいかも知れません。
(取材・文=堀田将生)




