サファリと遊園地を楽しむことができ、小動物から猛獣まで150種類ほどの生物を飼育・展示している「姫路セントラルパーク」(兵庫県姫路市)。関西エリアでは「姫セン」と呼ばれ親しまれている同園に、7月末、インドからやって来た4頭(オス1頭・メス3頭)の元気なアジアゾウが仲間入り。すでに一般公開がスタートしています。
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日本時間の7月24日、ゾウたちはトレーラーで現地空港まで運ばれ飛行機に搭乗。7月25日の昼頃に関西国際空港に到着しました。気温が落ち着いた同日21時頃、姫路へ移動を開始。同園に無事到着したのは、現地を発ってから実に35時間後のことでした。
受け入れのきっかけは、2023年に当園とインドのバナーガッタ生物公園とで結んだ共同研究に関する契約でした。絶滅危惧種でありワシントン条約により規制されているため、輸入するためには日本動物園水族館協会が定めた飼育ガイドラインをクリアし、政府から承認を得ることが必要だったそう。「展示場は1頭あたり500平米以上」「観覧者とゾウとの間は4メートル以上空ける」「体が浸かれるほどのプールを用意する」など、数々のルールが存在しているのだとか。
同園園長の西角知也さんは「5年前まで当時オスでは国内最高齢のアフリカゾウを展示していた場所ではこれらの規定を満たすことは難しかった。そのため、約5億円かけて本来の生息地や生態に合わせた環境整備を進めました」と話します。
ゾウたちも、半年前から日本に来るための準備を進めていました。何十時間も密閉空間で過ごすのは、慣れていないとかなりのストレスがかかるため、輸送檻で過ごすトレーニングを実施していたのだとか。こうした双方の努力を踏まえ、「アジアゾウを飼育するうえでの高いスキルをバナーガッタ生物公園には共有してもらいつつ、繁殖方法などについて研究を進めていくことができればと考えています」と西角さん。
森林や山などの起伏地域に生息しているアジアゾウは基本的に群れで行動しているそうですが、オスは大人になるにつれ単独行動を取るようになります。一日のうち20時間をエサを得るために費やし、行動量の多い生活を送っているという一面も。今後、同園での飼育にあたっては「準間接飼育(動物と同じ空間には入らず檻越しに号令を出す)」を取り入れるのだとか。
「現地で彼らは直接飼育(ゾウ園の中に飼育員が入る)されており、4頭が環境に慣れるまではそのスタイルも実施します。ですが、徐々に日本の飼育方法へ移行していく予定。研究は、飼育員の安全面にも考慮しながら進行していきます」(西角さん)
5年前にアフリカゾウが亡くなり、すっぽりと空いた展示ゾーンを見て寂しさを感じていた西角さん。「今回のアジアゾウの受け入れをきっかけに、群れでの飼育を大切にしつつ、将来的には繁殖を実現したい」と展望を述べました。現在4頭は仲良く過ごしており、走り回って池に飛び込むなど徐々に環境に慣れていっているそうです。「彼らがやって来て、さらに施設が賑やかになりました。至近距離で魅力を体感してもらえれば」とメッセージを添えました。
運用元である株式会社ジャパンパーク&リゾートの営業部企画広報課・幸崎誠さんは、同園と地域の関わり方について次のように話し取材をしめくくりました。
「イベントなどを通して地域の魅力を発信できればと思います。姫路観光ではお城に注目が集まりがちですが、魅力はそれだけではないことを伝えたいですね」(幸崎さん)
(取材・文=長塚花佳)
※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年8月20日放送回より





