「カタチにするチカラ~デザインと現場の交差点~」(1)仕事は楽しく デザイナー・コシノジュンコ | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「カタチにするチカラ~デザインと現場の交差点~」(1)仕事は楽しく デザイナー・コシノジュンコ

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 世界的デザイナー・コシノジュンコが、建設現場のワークウェアをデザイン、クレーン車もデザインした!その実現の背景には、人との出会いがあった。建設現場で働く人々、それを支える企業。そこにデザインが加われば新たなカタチに、そしてチカラになる。コシノさんのデザインに対する思いなど、番組で語られたエピソードを再構成した。前編は「デザイナー・コシノジュンコ」。

■デザイナー・コシノジュンコ

 日常生活にはデザインがあふれている。意匠や装飾にとどまらず、物事をスムーズに進めるために整えることやその計画も、デザインと言える。

 2025年、大阪では「大阪・関西万博」が開催されている(10月13日まで)。万博を支える延べ3万人のボランティアのユニフォームのデザイン監修を担当したのが、世界的デザイナー・コシノジュンコさんだ。「年齢に関係なく誰もが着ることができる。遠くから見ると若く見え、近づくといろいろな年齢がいると気づく。まさに多様性があるというか……同じ服を着ることで気持ちが1つになる。まさに『uni(ユニ)』。初めましての人も、前から知っている人のように和やかな雰囲気になる。そういう意味で(ユニフォームは)すごいコミュニケーションツールだと思います。これを着たいからボランティアに応募したという人もいるそうですよ」と話す。

コシノジュンコさん
コシノジュンコさん

 そんなコシノさん、どのようにしてデザインの道に入ったのか。著書「デザインのGENTEN」の中で、「私は理論を大切にする感覚派」と述べている。幾何学的なもの、数学の幾何が大好きで、得意だったという。「幾何はデザインでしょ?」と。勉強というより遊びの感覚だった頃と同じように、仕事にも取り組んでいるそうだ。

「遊びというか楽しいというか。長年培われてきたものは誰にでも何かがある。それがいざ仕事となると出てくる。何もないと出てくるものがないかもしれないけど。常に興味を持つことや好奇心はとても重要。その積み重ねたものが形になって出てくると思う」と分析する。

 とはいえ、常に緊張感をもってアンテナを張り巡らせているわけではない。「その点ではナチュラルです。ワー!とか素敵!とか、人間本来の自然な感情を大切にする。そういう感覚です。例えばおいしいものを『美味しい!』と言いながら食べるのと、無言で食べるのは違う。美味しいは『美しい味』と書く。目で食べるというか、感覚的ですよね。漢字には深い意味といわれが理論的に備わっているので、誰にでもわかる。日本の漢字は素晴らしい」と話した。

 日本を代表するホテルのひとつ、リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション(大阪市北区)。外国人も多く訪れる。そのホテルのユニフォームのデザインを担当したものコシノさんだ。見た目が大事としたうえで、客がまず接するポーターについて第一印象が大事だと話す。「ポーターがカッコイイと、大阪がカッコイイ。特に外国人客の場合、そのまま日本がカッコイイと。ホテルだけでなく大阪、ひいては日本のイメージにつながる」。

 その裏には香港での忘れられない経験があった。ホテルに着いた際、真っ白なスーツを着てポーターの帽子をかぶった小学生くらいの子どもが、2人でドアを開けてくれた。「その間を入っていくのって素敵だと思わない?」その印象が香港の第一印象になったそうだ。

 大阪で、コシノさんは実際にロビーで働く人の姿を見ていたそうだ。人がどのように動いて、どこで何を求められているのかをしっかり見極めた上で、余計なものを取り去り何が残るかというデザイン。まさにシンプル・イズ・ベストのデザインが生まれた。

 第一印象が大事だとするポーターのユニフォーム、こだわったのは後ろ姿だ。ホテルに到着した客は、ポーターに先導されて、ロビー・チェックインカウンターへ向かう。つまり後ろからついていく。「だから後ろ姿のデザインにこだわった」。とはいえ、気づかない人も多い。気づいた時に「ちょっとしたデザインがいいな、と思ってもらえれば、ホテルのイメージを伝えられる。言葉ではなく、見た目でメッセージを発信している」という。

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