巨大であどけない少女の笑顔、山にのぼったしらす 今年の神戸六甲ミーツ・アート 見どころ紹介【1】 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

巨大であどけない少女の笑顔、山にのぼったしらす 今年の神戸六甲ミーツ・アート 見どころ紹介【1】

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■兵庫県立六甲山ビジター(記念碑台)
 岡留優の「別荘」は6分の1サイズのドールハウス。六甲山にある別荘をリサーチして作った作品で、室内に大きな換気扇を付けるなど、実際の別荘をまねてしつらえた。窓から見える緑豊かな景色も魅力的だ。作者自身が人形を動かしながらポイントを紹介するパフォーマンスのライブ配信を2週間に1度行っている。

「風で動く彫刻」もある。機械式時計に用いられる構造を取り入れて、彫刻家の石島基輝が制作した「風の中のClock systems」。石島は「時計は現代社会において効率や生産性を高めるために使用されてきたものだが、本作品では自然から時間を切り離すために生まれた機械(時計)を、自然とともに動く装置へと変容させることを試みた。自然環境によって音や動きが変化する作品を通じて、自然に内包される時間の流れを体感してもらえたら」と話す。

岡留優「別荘」

石島基輝「風の中のClock systems」

■ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム・六甲高山植物園・新池)【1】
 作品が最も集中しているのが同エリア。芸術祭の拠点となっている「ROKKO森の音ミュージアム」野外アートゾーンには、日本を代表する美術作家・奈良美智による彫刻作品「Peace Head」が登場。粘土で作った原型を拡大したもので、アルミとウレタン加工を施した高さ約247センチの少女の顔があどけない微笑みを浮かべている。背面には「peace」の文字とピースマークが刻まれ、作品に込められた思いを伝えている。

「プリンセス ドリアンとその一族」は、焼いた陶土による人型と球型のオブジェと本御影石で構成した作品。中央に置いた「プリンセス ドリアン」はサンバチームの日系3世ダンサーという設定で一昨年から登場。昨年は周囲に仲間が現れ、今年はさらにメンバーを増やした。作者は三梨伸。

 緑が広がる風景の中、ビビッドな配色で度肝を抜かれるのは植田麻由の「Daikon」だ。植田が育てている大根をモチーフにした陶芸作品で、大根が古代から世界各地で豊穣や再生、生命力の象徴として親しまれてきた背景にも着目した。植田は「作品を通じて、人間と自然の共生のあり方について、鑑賞者それぞれが今一度考えるきっかけにしてもらえたら」とコメントしている。

奈良美智「Peace Head」
三梨伸「プリンセス ドリアンとその一族」(一部)
植田麻由「Daikon」

 公募のグランプリを受賞したのは、アートプロジェクト「風の環」が手掛けた「しらす、山に昇る」。神戸の漁業関係者、六甲山で森のメンテナンスと木材加工に関わるプロなどが集まった、芸術の域にとどまらない専門家たちが作者で、同作は六甲高山植物園内に設置されている。鑑賞者が木材で組まれた円筒空間に入り、「酸素を求めて山にのぼるしらすの群れ」を体感するアート。山に設置したセンサーの気象データが人工光を変化させ、光と風に反応するしらすのオブジェが輝き、揺れる仕組みだ。3270匹のしらすを模したパーツは、神戸の漁師や地元ボランティアらが1つ1つテグスに編み込んだという。風の環メンバーは作品に「風の正体を多角的に問いかけ、六甲の山・街・海の密接なつながりを身体で感じ、見えない自然の循環に気付くきっかけになれば」との思いを込めている。

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