神戸の地下鉄では、駅を日常の移動だけでなく、アートや音楽、イベントを楽しめる場として活用する取り組みが広がっている。
開業から25年を迎える、神戸市営地下鉄海岸線。三宮・花時計前と新長田を結ぶ全長約7.9キロの路線は、市民の生活の足として活用されている。また、沿線には親子向けの施設「こべっこランド」や、サッカーやラグビーの試合でにぎわうノエビアスタジアム神戸があり、それらへのアクセスとしての役割も果たしている。
その海岸線では、駅構内を「ミュージアム」に見立てた「KOBE SUBWAY MUSEUM PROJECT」を始動。使用されていない壁面やショーケースに若手アーティストの作品を展示し、作品横に設置されたQRコードから関連情報や作品購入につながる仕組みも取り入れている。

展示はおよそ2か月ごとに入れ替えられ、初回は兵庫県出身のアーティスト・山口啓介さんの大型版画作品がハーバーランド駅に登場。現在は三宮・花時計前駅や旧居留地・大丸前駅などで、神戸の芸術祭で活躍してきたアーティストたちの作品が並ぶ。これらには、一般向けの説明のほか、子ども向けにやさしい言葉での解説も用意。気軽にアートを楽しめるよう配慮されている。
神戸芸術振興協会の担当者によると、来年度には展示の範囲を海岸線の全10駅に広げる予定。今後は「市内のアートイベントと連携することで、神戸のまち全体でアートを盛り上げたい」と話す。

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一方、海岸線では全駅にストリートピアノを設置。グランドピアノまたはアップライトピアノがそれぞれの駅に置かれ、行き交う人の前で演奏を披露したり、近隣住民が日常的に練習したりするなど、老若男女の利用目的はさまざま。公共空間を活かした音楽体験として定着しつつある。
「いろいろな方の日常にストリートピアノが組み込まれているのをうれしく思う」というのは、神戸市文化スポーツ局文化交流課の担当者。「普段利用している駅に、気軽に弾けるピアノがあることで、街なかに音楽があふれている環境につながっている。ピアノを弾く方にも聴く方にも楽しんでもらいたい」と述べている。

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イベントでは、最近、地下鉄駅構内で映画と連動したものも展開され、話題を呼んだ。それが、新長田駅で行われた、ゲーム原作の映画『8番出口』とのタイアップイベントだ。
きっかけとなったのは、新長田駅地下通路の活性化。神戸市交通局の担当者が、同作の世界観にヒントを得て「新長田8番出口プロジェクト」を立ち上げると、局内の係や課の立場を超えた協力を得て企画をまとめ、映画配給会社のタイアップをとりつけて実現に至った。
同イベントでの地下通路を使った世界観の再現は、SNSで広く共有されることに。無料で見学できる手軽さから、多くの人が同駅を訪問。記念グッズ配布も短期間で終了するなど、想定を超える人気に担当者も驚いたという。(※イベントは9月末で終了)





