9月は防災月間です。地震や豪雨などの災害に備え、避難所の設備や支援体制に注目が集まります。一方、災害時には医師だけでなく薬剤師も奔走しているのだとか。一般社団法人姫路薬剤師会会長・泉憲政さんに詳しく聞きました。
☆☆☆☆
泉さんによると、薬剤師は通常の調剤業務に加え、在宅医療や地域密着型の健康相談など幅広い活動を行っているとのこと。高齢化が進む社会では、患者の自宅に訪問して服薬指導や薬の管理方法を説明することも、薬剤師の重要な役割なのだそうです。
また医療費の圧迫による現行の保険制度の維持にも関心が高まる中、薬局では「残薬」への対応にも力を入れています。「残薬」とは、患者の飲み忘れなどで残ってしまった薬のこと。発見した際は薬局に持参して薬剤師に相談することで、次回から薬の量を調整することが可能に。こうした取り組みは、結果的に医療費削減にもつながります。

災害時の薬剤師の役割はさらに重要です。兵庫県では「災害派遣薬剤師チーム」が活動しており、医師と連携して被災地の避難所に入り必要な薬を届ける支援を行っています。
泉さんは能登半島地震での活動経験を振り返り、「避難所で普段通りの薬が飲めるかどうかで、高齢者の健康状態に大きな差が出ます。特に血圧や血糖値を管理している人にとって、継続した服薬は命に関わる重要な課題です」と語りました。
最近では、マイナンバーカードに連動した保険情報やスマホアプリの「お薬手帳」を活用することで、災害時でも速やかに薬を提供できる体制が整いつつあります。しかし、兵庫県内の災害派遣登録薬剤師は約400人にとどまっています。この現状について泉さんは、「研修や登録を増やし、さらに地域の防災力を高めたい」と述べました。

☆☆☆☆
お薬手帳・常用薬の準備やマイナンバーカードの情報整理など「日頃から家庭でできる備え」をしておくことで、災害時に自身や家族の健康を守ることにつながります。いつ起こるか分からないの災害に対して、私たち一人ひとりも真剣に取り組む必要がありそうです。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「ヒメトピ558」2025年9月19日、26日放送分より


