9月の世界陸上東京大会で1500メートル、5000メートルの2種目に出場した陸上中長距離の日本代表・田中希実選手(小野市出身、ニューバランス所属)が、10日、兵庫県庁を訪れ、兵庫県の斎藤元彦知事を表敬訪問しました。

1500メートルでは予選敗退という悔しい結果に終わるも、5000メートルでは4大会連続で決勝に進出し、12位という結果を残した田中選手。大会を振り返り「多くの方々が陸上競技に熱狂していただき、自分の人生にとっても、日本中の方にとっても、すごく財産になるような時間を過ごせたと思う。これからにつなげていきたい」とコメント。結果については悔しい思いが強いというものの、東京五輪からの成長を実感したようで、「自分の弱さの正体をしっかり見据えたうえで、堂々と自分に向き合いたい」と前を向いていました。
斎藤知事は「まずは世界陸上おつかれさまでした。精いっぱい全力を出していただき、ひとりの県民としても大変勇気づけられた」と活躍を労い、「兵庫県のスポーツが県民の皆さんや地域の力になるということで、これからもますます活躍されることを期待している」と述べました。

この日は、田中選手の父でコーチの健智さん、母の千洋さん、田中選手の先輩にもあたる北京五輪女子5000メートル代表の小林祐梨子さんも同席。歓談の場では、現在の世界の陸上界の話や、田中選手のトレーニング合宿の場であるケニアの話などを展開しました。
そのなかで、斎藤知事は、田中選手の表現力の豊かさやトークスキルに感動し、「よく本を読んでいたのですか?」と質問。これに対して田中選手は読書好きを明かしたうえで、「本を読むことがアイデンティティーをつくった。本を早く読むために、学校から走って帰ってきたほど」と子ども時代のエピソードを明かし、歓談の場を沸かせました。

知事との歓談後、メディアの囲み取材に応じた田中選手は、来年について、海外やインドアなど、多くのレースに出場する意向を表明するも、都道府県対抗駅伝については「今のところ検討中」とのこと。新たな挑戦としては、1500メートル、5000メートルにいかすべく、800メートルや1万メートルといったスピード、スタミナが求められる種目にも出て、「より力をつけていきたい」と、精力的な姿勢も打ち出しました。
兵庫県では、今年から次世代のアスリート育成を目的とした「HYOGO STAR PROJECT」に取り組んでおり、スポーツを通じた地域の活力づくりをさらに進める考えです。
これについて田中選手は、「ライバルに勝つことも大事だが、まずは楽しんで走ってほしい。力が発揮できなくても、あきらめてほしくない」と述べるとともに、「そういうプロジェクトで強化の対象になった選手も、勝たなければという思いだけでなく、将来をみすえて、わくわくしながら競技に取り組んでほしい」と、子どもたちに向けてエールを送っていました。
ちなみに、いまはちょうど運動会の時期。「運動会や体育祭では、かけっこは短い距離なので、リレーメンバーに選ばれなかったり、かけっこも遅かったり、勝てない部分が多かったが、今思えばなつかしい思い出」と、意外な過去も吐露した田中選手。子どもたちには「足が速い子は、友だちやお父さん、お母さんにいいところを見せようと頑張ってほしい。逆にちょっと運動が苦手な子も、今しか味わえない時間だと思うので、(運動会の楽しさを)しっかり記憶に刻み付けてほしい」と呼びかけていました。




