古都の秋を彩る恒例の展覧会「正倉院展」が奈良国立博物館(奈良市)で開かれている。77回目となる本年は、美しい青色のガラス製さかずきや天下人たちが楽しんだ名香、聖武天皇愛用の品々など67件の宝物を公開。古代日本の国際交流とそこから花開いた文化芸術に触れることができる、年に1度の貴重な機会だ。11月10日(月)まで。

全8章で構成。第1章「清雅なる宮廷世界」では、精緻な寄木細工によるすごろく盤「木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)」、シルクロード各地の貴重な素材を用いて作られた「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」など、国家珍宝帳に記載のある聖武天皇ゆかりの品が並び、当時の宮廷に足を踏み入れたような華麗なる空間が広がる。
「天下の名香」とうたわれ、織田信長ら時の権力者らが一部を切り取ったことでも知られる香木「黄熟香(おうじゅくこう)」(通称・蘭奢待=らんじゃたい=)は独立したガラスケースで展示。全方向から観賞でき、切り取られた箇所を示す付箋も確認できる。
東大寺に伝わる絃楽器「桑木阮咸」(くわのきのげんかん)は、第3章「天上の調」の中央に配置。周囲には竹管を重ねた管楽器や楽舞用の面、上着などが並び、1952年に収録された桑木阮咸の実際の音も流れる。奈良時代のイベントに身を置いているような臨場感あふれる演出だ。
布製品類も見どころの1つ。花模様を表した羊毛フェルトの敷物「花氈(かせん)」や縦長の帯を橫に連ねた幕の一部「纐纈絁幔残欠(こうけちあしぎぬのまんざんけつ)」はどちらもインパクトのあるデザインで、はっきりと残る色にも驚かされる。752年、東大寺の大仏開眼会で筆に取り付けて用いた絹の紐「縹縷(はなだのる)」は日本に現存する最古の藍染品とされ、上品な藍色が目を引く。
展覧会のメインビジュアルにもなっているコバルトブルーのガラス製さかずき「瑠璃坏(るりのつき)」は展示の最後に登場。ライトアップによって幻想的な輝きを放ち、エキゾチックな天平の美を今に伝える。
同博物館の井上洋一館長は、「今年は万博イヤーで戦後80年、奈良国立博物館開館130年、さらに奈良博誕生に大きく関わった、第1回奈良博覧会から150年にあたる。(正倉院展への出品物を選定する)正倉院事務所は今回、同博覧会に出された蘭奢待などの宝物を選んでくださった。粋な計らいに感謝している」とあいさつ。「宝物は、シルクロードを介したさまざまな交流がすばらしい化学変化を生み、そこに新しい文物、思想、哲学を誕生させたことを教えてくれる。交流は新たな社会形成の原動力にもなった。そのことを皆さんに感じてほしい」と話した。問い合わせはハローダイヤル050-5542-8600。
※展覧会は終了しました
◆「第77回 正倉院展」
会場 奈良国立博物館(〒630-8213 奈良市登大路町50)東西新館
会期 2025年10月25日(土)~11月10日(月) ※会期中無休
開館時間 8:00~18:00 金土日曜と祝日は20:00まで。いずれの日も入館は閉館の60分前まで。
観覧券(日時指定券) 一般2,000円、高校・大学生1,500円、小中学生500円。キャンパスメンバー学生400円。レイト割(午後4時以降/月〜木・金土日祝・午後5時以降)は一般1,500円、高大生1,000円、小中生無料。日時指定券に空きがある場合、当日も博物館特設窓口で販売(別途、発券料200円が必要)
問い合わせ ハローダイヤル050-5542-8600
奈良国立博物館ウェブサイト





