転職コンサルタントが教える異業種間転職のコツ「過去の職務経験や実績ばかりを語るのはNG」

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 総務省が発表した労働力調査によると、2024年の正社員の転職者数は99万人となり、統計を開始した2012年以降で最多となった。終身雇用制度の衰退のほか、若年世代の意識変化によって転職は今や当たり前の時代になっている。

 転職活動をするにあたって避けては通れないのが面接だが、「新卒採用時の面接とはまた違ったコツがある」と話すのは、転職コンサルタントの松下公子さんだ。

転職コンサルタントの松下公子さん

 松下さん自身、25歳のときにフリーターからアナウンサーになり、テレビ・ラジオ4局でキャリアを築いた。現在はアナウンススクールの代表を務め、転職コンサルタントとしても活動。飲食店スタッフからIT企業、販売員から人事アシスタントといったように、異業種・未経験からの挑戦者を内定へと導いた実績を持つ。今年10月には、著書『逆転転職 未経験・異業種からでも選ばれる! 共感ストーリー戦略』(※)を出版している。

 松下さんによると、異業種間転職で最も重視されるのは「志望動機」だという。これまでのキャリアの自然な流れではなく、その業種をなぜ選んだのかが問われるからだ。

 志望動機に納得感があり、これまでの経験と結びついている場合は「ウチの会社に貢献してくれそうだ」と前向きに評価される傾向がある。また、「御社の理念に共感したからです」という志望動機では足りず、「なぜその理念に共感したのか」、「過去のどんな経験がその気持ちを生んだのか」を伝える必要があるのだという。

代表を務めるアナウンススクールで生徒に指導をする松下公子さん
代表を務めるアナウンススクールで生徒に指導をする松下公子さん

 そして、自己紹介をする際にも大きな落とし穴があるようだ。「異業種間転職者は自分の過去の職務経験や実績ばかりを語りがちです。それも大切ですが、それだけではこの会社でどう働くかが見えてこない場合もあります」(松下さん)。

 例えば営業職として5年間、勤務していた場合に「接客対応やクレーム処理なども多く経験し、柔軟な対応力には自信があります」だけではどう活躍するかが見えてこない。この場合、「ただ物を売るのではなく信頼を築く営業に挑戦したいです。入社後は接客経験をいかしながら、お客様との関係づくりに強い営業担当として御社のファンを増やす存在になっていきます」という自己紹介をすれば、入社後にどう働くのかが明確になり、印象に残るという。

 さらに、転職に限らず、様々な面接で使えるテクニックとして、「共感ストーリー感情グラフ」というものを提唱している。

 これは、自分の過去を“感情のアップダウン”で整理し、ストーリーにするグラフのこと。その際、「仕事を教える立場になり楽しくなる」といった快の感情(+)と、「仕事を覚えるのが大変でモヤモヤ」といった不快の感情(-)を書き出し、過去から現在までをグラフ化していくことで自分でも気づいていなかった価値観や人生の軸が見えてくる。

「多くの人は成功体験ばかりを語ろうとしますが、面接官が知りたいのは人間らしいリアルな成長なんです」と、松下さん。このグラフを利用して失敗や挫折をどう乗り越えたかを語ることで、その人自身の思考力や前向きさが伝わるという。そして、その中で自分で決めた信念が見えてくるそうで、その信念こそが面接官の心に響く自分らしさの源になるのだと語る。

 最後に松下さんは、これから転職をする人に向けて、次のようにアドバイスを送った。

「『完璧な自分になってから動き出そう』という人が多いのですが、完璧な自分にはなかなかなれません。行動した先にこそ、新しいチャンスと出会いが待っていますので、迷いながらでいいので動き出してみてください」

※「共感ストーリー」は株式会社STORYの登録商標

(取材・文=バンク北川 / 放送作家)

松下さんの著書『逆転転職 未経験・異業種からでも選ばれる! 共感ストーリー®戦略』
『逆転転職 未経験・異業種からでも選ばれる! 共感ストーリー戦略』(松下公子著、WAVE出版)
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