2024年11月、92歳で亡くなった詩人・谷川俊太郎。これまでに200冊もの絵本をつくってきた。その中から約20冊を取り上げ、大人から子供まで誰もが楽しめる絵本の世界を再現した展覧会が、市立伊丹ミュージアム(伊丹市)で開催されている。2025年12月25日(日)まで。
タイトルは「谷川俊太郎 絵本★百貨展」。「デパートのようにいろいろなものを集めました。順路通りに見る必要はなく、好きなように。谷川さんの壮大な世界が広がっているので、体感してほしいです」と同ミュージアムの岡本梓学芸員は話す。

会場には、絵本とともに、アートディレクターや映像作家、建築家など、多彩なクリエイターたちが表現した映像や朗読、音、インスタレーションなどが並ぶ。会場のあちらこちらで見られるひよこは『ぴよぴよ』から。オノマトペでつづられるひよこの冒険物語だ。岡本さんは「ひよこが池に落ちた時のぴよぴよと、何かを見つけた時のぴよぴよはニュアンスが全く違う。それを堀内誠一さん(グラフィックデザイナー)が描きわけている。谷川さんがつむいだ言葉が絵によってさらに広がり、豊かな世界になる」と解説する。


谷川は「すき」という言葉が一番好きだったという。『すきのあいうえお』は、谷川に好きなものを五十音順に挙げてもらい、写真家の田附勝が撮影した写真と共に映像にした作品。今展のために作られた。「たとえば『しろ』だと、白なのか城なのかわからない。そんな風に谷川さんが挙げた『言葉』を受けて、田附さんが解釈して『写真』にしたので、おふたりのコラボ作品と言えます」と岡本さん。
アメリカ・ニューヨークで元永定正(画家・絵本作家)に出会ったことで生まれた作品『もこ もこもこ』。谷川自身が朗読を担当した映像とともに原画が展示されている。
「関西弁の元永さんと、生まれも育ちも東京の谷川さん。まさに異文化の衝突で仲良くなったようです。元永さんは落書きみたいな絵を描いては谷川さんに『ちょっとタイトルつけてえな』と言って、よくふたりで遊んでいたとか。『もこ もこもこ』はその延長線上で生まれたのでしょうね。谷川さんも元永さんの意味にとらわれていない絵を受けて、『詩だけでなく絵本の世界でもノンセンスの分野に進めた』と仰っていますが、お互いにとって大きな刺激となったコラボだったのです」と岡本さんは話す。
今展は各地を巡回しているが、『もこ もこもこ』の原画が展示されるのは伊丹会場だけ。さらに元永の妻である中辻悦子(美術作家)とのコラボとなった『よるのようちえん』の原画も、伊丹会場だけで展示されている。「伊丹市内の白ゆり幼稚園がモデルだが、現在、園舎の建て替えが進められているので、かつての建物や遊戯の記憶が絵本の中に留められている。関西、および伊丹市にとって縁の深い2つの作品でスペシャルコーナーです」。





