山で学び、廃校で挑む 自然と人をつなぐ若者の一歩 現場で実感した“学び”とは

LINEで送る

この記事の写真を見る(7枚)

 昨今、野生のクマをはじめとする動物(鳥獣)による農作物や森林への被害が深刻化しています。農林水産省によると、令和5年度の「鳥獣被害」額は164億円に上り、営農意欲の低下や耕作放棄の増加を招いているといいます。背景には、地球温暖化による野生動物の生息域拡大、高齢化による狩猟者の減少、過疎化による耕作放棄地の増加など、複数の要因が重なっています。

 こうした中、第一次産業の担い手不足が課題となる今、自然と向き合いながら地域に新たな形で関わろうとする若者がいます。

松尾銀河さん

 松尾銀河さん。彼の活動の原点は、大学時代の体験にありました。

 大学3年のとき、松尾さんは「自然の中で自給自足の生活をしてみたい」と考え、1年間休学して和歌山県古座川町の山間集落に移住。友人たちとシェアハウスで暮らし、水は井戸水、火は薪を使う生活を送りました。鶏や畑で食料を育てながら、地域の猟師との出会いをきっかけに「罠(わな)猟」の免許も取得しました。

 また、福岡県添田町で地域おこし協力隊として獣害対策やジビエ推進に携わった際も、野生動物の捕獲や解体、精肉作業を通して、食材がスーパーに並ぶまでの多くの工程を直に知るとともに、自然環境の影響の大きさを実感しました。

「農業や狩猟では、私たちの手だけでなく、四季の移ろいや気候、生態系のバランスといった自然の力も深く関わっています。自然との対話があってこそ、第一次産業は成り立つのだと感じました」

 それらの経験を糧に、現在、松尾さんは、廃食油の再生処理事業などを手がける企業で、廃校を活用した地域づくりのプロジェクトに取り組んでいます。淡路島の洲本市にある廃校の校庭で農作物を育てるとともに、校舎を宿泊施設や貸し工房として改修する計画を進めています。

「山で学んだことは、ここでも活かせます。自然との関わりや第一次産業の経験を、廃校という場所を通して多くの人に体験してもらいたい。教育や芸術、地域活動にもつなげていきたい。ゆくゆくは、持続可能性を感じられる“リサイクルミュージアム”のような空間にもしたいです」

 廃校を舞台にした取り組みは、自然との関わりを通して若い世代が第一次産業や里山整備に触れるきっかけとなり、新たな担い手を育む可能性を秘めています。松尾さんの挑戦は、個人の経験が地域と結びつき、新しい価値を生み出す一例です。

 自然と人との対話から、未来の第一次産業を支える若者たちの歩みが始まっています。

※ラジオ関西『正木明の地球にいいこと』より

ラジオ関西『正木明の地球にいいこと』より
浜田化学株式会社のSDGs事業推進室で廃校活用プロジェクトチーフをつとめる松尾銀河さん(中央)と、ラジオ関西『正木明の地球にいいこと』パーソナリティーの正木明(右)、荻野恵美子(左)
LINEで送る

関連記事