こんなこともあった。本番当日、緊張で出演できない子がいるという。スタッフは一切介入せず、子どもたち自身でどうしたら舞台を作り上げることができるかを話し合った。結果、30分間出ずっぱりのその役は、みんながセリフをカバーし合うことで成立させた。
最後まで公演をやりきる。これは単なる演劇ではない。彼らの人生を変える、自立と協調の物語ともいえる。
保護者や教員も変化していく。「我が子にこんなことができるとは思わなかった」という言葉が、舞台のあとに繰り返される。子どもたちの成長は、家族の希望にもつながっていく。
但馬では、2027年春に、豊岡聴覚特別支援学校と出石特別支援学校が統合する予定だ。平田さんによると、新設校では、日本で初めてとなるワークショップスペースが設置されるという。
「それこそ、直前で『出たくない』と言い出す子のために、舞台袖の逆サイドの廊下に抜け道をつくる予定です。ずっといるのも苦痛ですもんね。専門家の知見もいかし、壁や天井にラバーや吸音材を貼るなど、子どもたちが楽に過ごせる設計になるようです」(平田さん)
大平さんの夢は、子どもたちが社会に堂々と参加できる力を育むことだ。
「公演後は、ハンバーガーとおやつで一本締め。どうやら、打ち上げの楽しさも覚えたようです」(大平さん)
演劇は単なる表現手段ではなく、彼らの可能性を引き出す魔法のツールなのだ。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年11月20日放送回より
●体験ワークショップ開催
日時:2026年1月18日(日)13:00〜※参加費無料
内容:2時間で10分程度の舞台作品を創作
申込方法:ホームページから申し込み可能
【放課後るび】体験ワークショップ申し込みページ

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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





