映画『国宝』の大ヒットもあり、再評価されている日本の伝統文化。歌舞伎や能などの舞台を彩る要素の一つに“音楽”があり、これを構成するのが笛や鼓などの古典和楽器。今回はその中のひとつ三味線について、兵庫県神戸市に店を構える「結」の布施剛史さんに話を聞きました。

☆☆☆☆
長い歴史を持ち、古くから日本人に愛されてきた三味線。布施さんはその魅力について「日本の伝統楽器でありながら、工芸品のような美しさを兼ね備えているところ」と語ります。
「三味線は至るところに職人の緻密な技術が詰め込まれています。また本体には『唐木』と呼ばれる希少な木材、道具や細工には象牙や鼈甲などが用いられますが、どれをとっても同じ表情のものが存在しない。それが素晴らしい」(布施さん)
一口に三味線といっても種類があるようで、棹(さお)の太さで分別され、大きくは「太棹」「中棹」「細棹」の3種類があるのだとか。
●太棹/棹が最も太く全体的にサイズが大きい。音色は深く重みがあり、迫力たっぷりの大音量を出すことが可能で、「弾く」というより撥(ばち)で「叩く」ような奏法が特徴。和太鼓との共演や現代曲に用いられることが多いが、本来は東北〜北海道地方の民謡の伴奏楽器。津軽三味線のほか、義太夫・浪曲などに用いられる。
●中棹/細棹と太棹の中間の太さ。人の声や他の楽器に合わせやすい音域を持ち、音色の響きが良く唄と演奏の調和が取りやすいのが特徴。 民謡・地唄・常磐津、新内などに用いられる。
●細棹/棹が最も細く全体的に小ぶりで、乾いたような透明な音色。長唄・小唄・清元はもちろん歌舞伎音楽などでも使用され、学校教材としても選ばれることが多い。

さて、「三味線を演奏できるようになりたい」と思ったら何から始めればいいのでしょうか? 布施さんに質問すると、“3つのステップ”を提案。
●ステップその1:自分がどんな音楽を弾きたいのかを知る
「三味線のジャンルは様々。まずはコンサートや演奏会を見に行くことをおすすめします」(布施さん)
●ステップその2:三味線教室を探す
「弾きたいジャンルが決まったら、次に必要なのが練習です。しかしながら独学での習得は相当ハード。そのため、通える範囲で三味線教室を見つけるのが得策です。お稽古体験を実施している教室もあり、実際に三味線に触れるのがオススメ。マイ三味線を買うのはその後がよいかと思います」(布施さん)
●ステップその3:三味線を手に入れる
「三味線を含め、弾くために必要な糸(弦)と撥を揃えます。いずれもジャンルによって素材・価格に大きな違いがあり、海外製の初心者セットは10万円未満のものも。プロ演奏家やお師匠さんクラスになると、100万円から200万円以上の物を使われる方もいます」(布施さん)

三味線をこれから始める人に向けてのアドバイスを求めると、布施さんは次のように話しました。「正直、難易度は高く扱いも難しい楽器です。ですが、難しいということは成長を感じられるポイントがたくさんあるということ。長い目で楽しみながら続けてください」。
☆☆☆☆
これから趣味で楽器を始めたいと考えているなら、「長く楽しめる」という意味で三味線を検討してもいいかもしれません。

(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2025年11月12日放送回より



