神戸市垂水区の山陽電鉄の踏切で2025年1月、中国人観光客の女性2人が電車にはねられ死亡した事故で、2人の両親が山陽電鉄と運転士を相手取り、慰謝料など計約1億4000万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。遺族の代理人弁護人が明らかにした。提訴は12月4日付。
訴状によると、女性2人(いずれも20代)は2025年1月9日午後、神戸市垂水区西舞子の山陽電鉄踏切内に北側から入り、遮断機の内側(軌道側)の車止めポールの手前で、国道2号線の横断歩道の信号が青色になるのを待機していた。 普通電車が時速62キロでこの踏切の約41メートル手前を走行中、運転士が2人を発見し、非常ブレーキをかけたが間に合わずに接触。2人は全身打撲や頭部外傷により死亡した。
原告はこの踏切について、▼国道に面した南側斜面の車止めポールの手前地面の勾配が緩く、遮断機の内側にあるため、通行者が(国道の横断歩道が)赤信号のときの待機場所と誤認しやすい ▼国道を通過する自動車の音に遮られて、本件踏切に進入してくる電車の走行音が聞こえにくい ▼こうしたことから、近隣住民の間では「危険な踏切」として知られ、以前から事故の発生が懸念されていたとしている。
そして、この踏切内では2009年以降、信号待ちが原因とみられる事故が、少なくとも3件発生しており、山陽電鉄側にこの踏切が危険性が高いという認識があったことから、「踏切内で人などを発見した時点で迅速な事故回避行動を促す検知システムを設置し、運転士が警笛を鳴らしていれば (死亡した2人が) 電車に気付き、退避できた」とし、 システムの設置を怠っていたことは、「安全性を欠いた状態を放置していた」と主張している。
山陽電鉄は事故後、 踏切南側の車止めポールと線路の間の地面に、多言語警告表示(ピクトグラム)を設置した。 提訴を受け、「訴状を受け取っていないのでコメントは控える」としている。



