興味深いのは、コウノトリの縄張り意識だ。豊岡の親鳥たちは自分の縄張りを厳しく守り、若い鳥たちは新たな生息地を求めて南へ移動している。今年生まれの若い鳥は、豊岡以外の地域でエサを探す傾向が強い。特に最近は兵庫県南部への進出が目覚ましく、播磨町をはじめとしたため池の多い地域で若い群れを見かけるようになったという。
地域経済への貢献も大きい。「コウノトリ育むお米」は高付加価値商品として人気を集め、地域ブランドとして確立されている。お米だけでなく、それを原料とした日本酒なども開発されている。
国際的な協力も進んでいる。今年は、コウノトリ放鳥20周年を記念して、韓国から卵を譲り受け、若い飼育個体を譲渡。生態系保全における国際協力のモデルケースとして高く評価されている。
椿野副園長は、今後の課題について「遺伝的多様性の維持と、さらなる生息環境の整備」と語る。
より多くの人にコウノトリを身近に感じてもらえるよう、今年10月から公園内の観察広場に遊歩道が設置され、より近くでコウノトリを観察できるようになった。将来的には、エサやり体験も計画されている。
平田さんは、「豊岡市民にとって、コウノトリは日常の風景の一部となっている」と語る。
「コウノトリを見ると、1日幸せな気分になるんですよね。皆さんおっしゃいます。地元で育んできた環境を応援するためにも、ぜひこうのとり育むお米やお酒を味わってみてほしい」(平田さん)
コウノトリの郷公園の挑戦は、単なる野生生物保護を超えた意味を持つ。環境、農業、地域振興が一体となった、持続可能な社会づくりの先駆的な取り組みなのである。
絶滅の危機から560羽にまで復活したコウノトリ。その軌跡は、人間と自然の共生可能性を示す、希望に満ちた物語といえるのではないだろうか。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年12月18日放送回より
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





