具体的には、日用品などの買い置きと備蓄を別のものと区別せず、特売日にいつものものを多めに買っておくというような、ちょっとした備蓄のコツをウェブサイトで紹介。災害時には需要が集中して物資不足が起こることも多いですが、日頃から少しずつ備蓄することで、社会的な混乱を防ぐ意味合いもあるそうです。
ネックになりがちな「場所」の問題に対しても、分散させて家中の「スキマ」にペットボトルなどを保管する方法を提案しています。調査結果や防災のプロによるアドバイスなどの情報も豊富なので、防災備蓄に不安がある人には参考になるのでは。
◆災害経験が生んだ備蓄商品 グリコの開発背景
備蓄向けの商品開発に取り組む企業もあります。江崎グリコは、国産初の乳幼児液体ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」や、定番のビスケット菓子「ビスコ」の備蓄用保存缶を販売しています。
広報担当者によると、ビスコ保存缶は、「阪神・淡路大震災を経験した社員が、避難先の小学校でパンと水が毎日配られている中、『同じものばかり食べられない』『甘いものも欲しい』という避難者の声を聞いたところから開発された」そう。

また、海外では40年以上前からある乳幼児液体ミルクについて、同社での開発・製造の契機となったのは、熊本地震の際に「『国産の液体ミルク』が欲しいという声が高まったこと」だったといいます。
世に送り出すまでには相当な苦労もあったようで「開発当時、日本では食品衛生法、健康増進法(特別用途食品)ともに、母乳代替品は”粉ミルク”しか基準が設定されていなかったため、製造・販売ができませんでした。何度も厚生労働省に足を運び、行政とともに基準を設定し、2018年8月に法令が改正され、乳児用液体ミルクの製造・販売が可能になりました」。
発売当初は防災備蓄として注目されましたが、現在では「外出時や夜間授乳など、日常での利用も広がっている」そうです。「商品を通じて、子育てを少しでも楽に感じてもらえればうれしい」と担当者は話していました。
◆まずは「無理なく続けられる備え」から
防災備蓄は「大掛かりな準備が必要」と構えてしまいがちですが、食べ慣れた食品や日用品を少し多めに買い置きしたり、ローリングストックとして日常的に使いながら入れ替えたりするなど、無理のない工夫で継続できる取り組みもあります。生活の中で負担なく続けられる方法を見つけることが、備えを進める一歩になりそうです。
(取材・文=中口のり子)


