神戸の「箱木千年家」国宝へ 14世紀建造、わが国最古の民家 箱木家当主「喜びというより責任重大」

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 文化審議会は22日、重要文化財(建造物)「箱木家(はこぎけ)住宅主屋」(神戸市北区山田町)などを国宝に指定するよう文部科学大臣に答申した。同住宅は14世紀ごろに建てられたとされる現存最古の民家建造物で、地元では「箱木千年家(せんねんや)」と呼ばれ、古来親しまれてきた。民家としては初めての国宝指定で、神戸市の建造物では太山寺(同市西区伊川谷町)本堂に続き2件目となる。答申通り指定される見通しで、建造物の国宝・重要文化財は2611件、5612棟(うち国宝235件、305棟)となる予定。

「箱木家住宅」(神戸市北区山田町)

 箱木家住宅は、衝原湖東岸に位置する中世民家。昭和50年代、ダム建設に伴い、当初の位置から約70メートル南東へ移築された。箱木家は中世、地元で勢力を持った土豪で、応永年間(1394~1428年)には地域の祭祀組織「宮座」において、頭屋に次ぐ「下頭屋」を務めていたことが知られている。建物はそうした地域支配層の住居として築かれ、中世の暮らしぶりや地域社会の実像を伝える極めて貴重な遺構だ。

縁側がついた「オモテ」。対外的な面会で使われた

 主屋は入母屋造、茅葺で、桁行11.4メートル、梁間8.4メートル。軒を低く構え、柱を外に見せない「大壁造」の外観は開口部が少なく、閉鎖的な印象を与える。正面に1室、背面に2室を並べる「前座敷型三間取」の平面形式は、この地域の民家の原型と考えられている。

 建築技法にも古い時代の特徴が色濃く残る。柱間がすべて異なる特異な柱配置で、断面が不整形な柱や細い角材の上屋梁、分厚い貫など、荒々しい加工の部材で骨組みを構成。さらに、上屋と下屋をつなぐ軸部材が存在しないのも極めて珍しいという。同住宅は1967年に重要文化財の指定を受けた。文化庁は「わが国の民家史の劈頭(へきとう)をなす遺構」と評価しており、文化史的意義の深さが国宝指定答申につながった。

土間。右奥はうまや(神戸市提供)

 調査に携わった神戸市文化財保護審議会委員(建造物担当)の黒田龍二・神戸大学名誉教授(日本建築史)は、箱木家住宅について「非常にしっかりとした設計で、仕事が上質。建てられた当初の形や部材もよく残っている」と評価。神戸市文化スポーツ局文化財課の川上厚志課長は、「長押などに手斧(ちょうな)によるうろこ状の痕跡がみられ、興味深い。荒削りのままで終わっている点でダイナミックな印象を受ける」と話し、「国宝であるとともに、山田町の宝、神戸市の宝。地元で大切にしていこうという機運がさらに高まれば」と期待を寄せた。

手斧の痕跡がみられる長押

 住宅は代々、箱木家が管理。ダム建設前までは住宅に居住していたが、移築後、一家は近接する別の家に住みながら、住宅の手入れや一般公開を担ってきた。国宝指定答申の知らせを受けた第51代当主の箱木眞人さん(94)は「重文の時もたいへんだったが、これからは国宝を守っていかないといけない。喜びというより、責任重大やなあと思う」と語った。黒田教授は「これまでのメンテナンスが素晴らしく、火事にならなかったことも幸運だった。長きにわたって守り抜いた箱木家の方々、その歴史も『国宝』だ」と称賛した。

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