デジタル化が進み、紙を使わない「ペーパーレス化」が広がる中、本や手書きの文字が持つ価値を見直そうとする動きが、神戸の現場で続いている。
神戸市兵庫区の「神戸市ものづくり工場」内に拠点を構えるダイカイ村井製本所は、昭和39年に村井製本所として創業(2023年に現社名に変更)。印刷物を本の形に仕上げる専門業者として、教科書や会社案内、パンフレットなどを手がけてきた。
しかし近年は、デジタル化や少子化の影響を受け、印刷・製本業界全体が縮小傾向にあるという。同社の取締役で3代目の村井広治さんは「ペーパーレスの流れは止められない」としながらも、「紙だからこそ残る価値がある」と話す。
かつて複数階に分かれていた作業場は現在、ワンフロアに集約。製本機やラミネート加工機などを備え、24時間稼働にも対応できる体制を整えた。住宅地から現在の工場へ移転したことで、騒音や稼働時間の制約も緩和され、生産効率の向上につながっている。
こうした中、同社は新たな取り組みとしてオリジナルブランド「MURAI BINDERY」を立ち上げた。製本の技術を生かしたペーパーアイテムを展開し、神戸市内の文具店などで販売。日常的に使える製品を通じて、紙の魅力を身近に感じてもらう狙いがあるという。
一方で、創業当初から続く「本の修理」も重要な仕事の一つだ。持ち込まれるのは、長年読み継がれてきた本や、思い出の詰まった大切な一冊が多い。「また読めるようになった」と喜ぶ利用者の声が、仕事のやりがいにつながっているという。状態によっては完全な修復が難しいケースもあるが、できる限り“読み継げる”形に仕上げる。
村井さんは「データにはデータの良さがある」とした上で、「紙には、『これはお母さんに怒りながら書いた』など、その時の気持ちや記憶が残る」と話す。手書きの文字や紙の質感に宿る“記録以上の価値”が、製本という仕事を支えている。
※ラジオ関西『三上公也の朝は恋人』より




