米国を代表する画家、アンドリュー・ワイエス(1917~2009年)。没後、日本で初めてとなる回顧展「アンドリュー・ワイエス展」が10月3日(土)からあべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれる。東京、愛知に続く巡回展で、日本初公開作品15点を含む約100点を通し、身近な風景や人物を精緻な写実表現で描き続けたワイエスの画業を紹介する。会期は12月6日(日)まで。
「アメリカを描く」画家として米国で国民的人気を誇り、日本にも多くのファンを持つワイエス。戦後アメリカ美術の前衛的な動きとは距離を置き、生まれ故郷のペンシルベニア州と、夏を過ごしたメイン州を主な舞台に、そこに暮らす人々や身近な風景を描いた。自身の人生経験や、対象を見つめる中で得た感覚を作品に重ねることで、個人的な風景を描きながらも、見る人が普遍的なものを感じ取る絵画を生み出した。
展覧会では、ワイエスの作品を5つの章に分けて紹介する。第1章では、同時代の前衛的な芸術動向にとらわれずに描いた、身近な人々や風景をテーマとした作品が並ぶ。とりわけ、強い意志を感じさせる若き日の『自画像』(1945年)は印象深い作品だ。第2章では「光と影」に着目。1945年に踏切事故で父と幼い甥を亡くし、さらに肺疾患の手術中に一時的に心臓が止まる経験をしたワイエスが、生と死を意識するようになった背景と、その意識が作品の画面構成にどう表れたかを感じ取ることができる。
第3章は、メイン州の「オルソン・ハウス」と、そこに暮らしたクリスティーナ、アルヴァロのオルソン姉弟に焦点を当てる。ワイエスは約30年にわたって姉弟や家を描き続けており、代表作の1つ『クリスティーナ・オルソン』も公開される。
そして本展の大きな見どころとなるのが第5章「境界あるいは窓」だ。ワイエスが繰り返し描いた窓や扉、水路に張った氷などを「境界」という視点から読み解く。単に内と外、生と死を隔てるものとしてではなく、両者をつなぐものとして境界を捉えた、ワイエスの死生観に迫る構成となっている。身近な土地と人々を描き続けたワイエスの作品には、特定の地域を超えて人の心に届く普遍性がある。精緻な写実表現の魅力に加え、何気ない風景の中に生や死、時間の移ろいを見つめた画家の胸の内を、まとまった作品群を通して知ることができる。
会期中は一部展示替えがあり、前期は11月3日(火・祝)まで。後期は11月4日(水)~12月6日(日)。





