世界で最も小さい「恐竜の卵」の化石が、丹波市山南町の前期白亜紀(およそ1億1000万年前)の地層から見つかり、現在、兵庫県立人と自然の博物館(三田市)で展示されている。
丹波市は、前期白亜紀の地層(篠山層群)が露出し、これまでに竜脚類恐竜(丹波竜)などの化石が見つかるなど国内の一大恐竜化石産地として知られている。2019年1月から3月にかけて行われた大規模な発掘調査で、形状をとどめた卵の化石や卵殻片の化石あわせておよそ1300点が見つかり、4種類の小型獣脚類恐竜の卵殻が含まれていることがわかった。
このうち1種類は、新卵種で、「ヒメウーリサス・ムラカミイ」と命名された。"hime"は「小さい、かわいらしい」という意味の日本語、"oolithus"は「卵の石」という意味のギリシャ語。そして"murakamii"は丹波竜の第一発見者・村上茂氏に由来する。卵の形をとどめているものもあり、大きさは長さ4.5センチ、幅2センチ、人間の大人の親指ほどの大きさで、現時点で世界最小の恐竜類の卵とされる。成長すると、にわとりほどの大きさの肉食恐竜になると推定される。
このほかにも新種を含む3種類の卵の化石が見つかり、丹波市で発見された「恐竜の卵の化石」は6種類となった。日本国内では41市町村で恐竜化石が見つかっているが、このうち卵の化石が見つかっているのは5市のみ。6種類が見つかっているのは最多。世界の前期白亜紀の地層でも、丹波市は「世界で最も卵殻化石の種類が豊富な地域」となった。
大型の恐竜に比べ、小型の恐竜は化石として残りにくいという。兵庫県立人と自然の博物館の久保田克博研究員は、「今回見つかった1300点の卵殻化石は密集したものもあるので巣があったと考えられる。これをきっかけとして、抱卵とか生態の研究も進んでいくと期待している。また卵を生んだと考えられる小型の獣脚類がまだ見つかっていないので、今後見つかる可能性もある」と話す。
また、県立人と自然の博物館では、最古の海鳥・ヘスペロルニス類の展示も行われている。2014年に淡路島に分布する和泉層群(およそ7200万年前)で、1本の細長い骨が見つかり、その後の研究で、白亜紀に生息した飛ばない海鳥「ヘスペロルニス類」の化石であることが分かった。
ヘスペロルニス類は、後期白亜紀に絶滅した海鳥で、およそ1億年から6600万年前に北半球、特に北米大陸に存在した内陸の海に繁栄した。同じ恐竜時代の始祖鳥よりも、現代の鳥に近い鳥類とされる。
この化石のほとんどは、北米の海の地層から発見され、アジアでは内陸の河川の地層から発見されていたが、淡路島で見つかったこの化石は、白亜紀末期の「海の地層」から産出したアジアで初めてのヘスペロルニス類と確認された。このことから、白亜紀末期のヘスペロルニス類は、北半球の淡水・海水環境の両方で広く分布していた可能性を示している。発見された1本の骨が世界的な発見になることを示す極めて重要なケースだという。
兵庫県立人と自然の博物館
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