関西国際空港の連絡橋にタンカーが衝突するなどした2018年の台風21号による被害から4日で2年となる。空港を運営する関西エアポートは護岸のかさ上げなどの対策を進めている。
台風21号では近畿地方を中心に広い範囲で暴風が吹き荒れ、関西国際空港では観測史上1位となる最大瞬間風速58.1メートルを観測。大阪湾を中心に潮位が急上昇。高波が護岸を越え、滑走路や電源設備が浸水した。さらに強風で流されたタンカーが対岸との間を結ぶ連絡橋に衝突。空港は閉鎖に追い込まれ、利用客ら約8000人が孤立した。
■関空、護岸工事も投資回収できるか
被害を教訓に、関西国際空港を運営する関西エアポートは、浸水した1期島の護岸のかさ上げ工事を2019年に開始。2020年8月からは消波ブロック約4万個の設置を始めた。関空の運営状況は新型コロナウイルスの影響で、国際線と国内線を合わせた旅客数は2020年4月から前年比9割以上の減少が続いている。
護岸対策工事の費用は約540億円を見込んでいるが、完成後に投資を回収できるだけの利用客が戻るかはわからないという。
■ここにも新型コロナの影響
被害の大きかった六甲アイランド(神戸市東灘区)でも、かさ上げなど全てを終えるのにあと2から3年はかかるという。神戸市によると、土地を利用する事業者との調整に時間がかかっているためで、2021年の台風シーズンまでには調整を終えたいとしている。
兵庫県は防潮堤の高さや気象庁の台風情報を基に高潮の危険度を予測するシステムを開発し、2020年の台風シーズンから県全体での試験運用を目指していたが、防潮堤のデータ収集などに時間を要した。また開発委託先の会社がコロナで在宅勤務を導入するなどして協議が遅れたとしている。
■「かつてなかった」からこそ「経験生かして」
海岸工学、沿岸環境などが専門の大阪大学大学院工学研究科・青木伸一教授はラジオ関西の取材に「2018年9月の高潮は、194人もの死者が出た第二室戸台風(1961年9月)以来約半世紀ぶりの被害。かつてないものだったといえる。やはり経験しないとわからない、逆に教訓を生かす価値が大きい。
台風21号は高潮=潮位が上がるだけでなく高波、浸水にも影響していた。防波堤自体は高潮に対応できても、高波のように波が打ち込んできた被害が各所にみられた。これまでに開発された堤防の機能についても想定を越えていた」と分析した。
そのうえで「阪神・淡路大震災以来、津波に関しては防災意識の高まりとともに、さまざまな対応があったが、高潮の被害について、具体的なイメージができず準備不足だったのは否めない。今後は津波と同じように対策を立てなければならない」と指摘している。