「びいどろ」や「ぎやまん」と呼ばれた江戸時代から明治時代のガラス工芸品およそ160点を集めた特別展「和(なごみ)のガラス くらしを彩ったびいどろ、ぎやまん」が、10月3日から神戸市立博物館で開催されている。【※イベントは終了しました】
今の暮らしの中で当たり前の存在となっている「ガラス」。日本で本格的な製造が始まったのは17世紀半ば頃とされる。江戸時代は「びいどろ」や「ぎやまん」と呼ばれ、当時輸入されていたヨーロッパ製のガラスや洋書を参考に製造されていた。限られた情報のなかでの製造だったので、ガラスの透明度が低かったり、表面にざらつきやゆがみがあるものも多かったが、時を経た今ではそのような欠点ともいえるものが「素朴さ」や「穏やかさ」といった魅力になっている。
製造が始まった当初は高級品で、医療器具など限られた人しか使えない貴重なものだったが、徐々に人々の暮らしの中に浸透していった。展示では、どのような場面で使われていたのかなどを文献から読み解いていく。
江戸時代の「手彫り薩摩切子青緑色被せガラス蓋物」は、厚さ3ミリほどもある青緑色の被せガラス(きせがらす)と透明ガラスとの間に見られるぼかしが特徴。ガラスに厚みがあるからできる技術で、今では不可能だという。
また明治中期から後期の「彩絵焼付蝶文藍色ガラス花瓶」は、鮮やかな青色ガラスに極彩色の極彩色の蝶文があしらわれている。粉末状のガラスを絵の具のように吹き付け焼きつける「エナメル彩」という技法は、江戸時代にはあまり見られず、松浦玉圃が完成させたとされる。玉圃の作品はこれまでに10数点しか確認されておらず、貴重な1品。
このほか、徳利や盃、櫛、室内を彩る調度品なども展示され、当時の人々が生活の中にどのようにガラスを取りいれ楽しんでいたのかに思いを馳せることができる。
神戸市立博物館の中山創太学芸員は、「形のゆがみも和ガラスの味のひとつ。素朴な美しさを見てほしい」と話す。
特別展「和(なごみ)のガラス くらしを彩ったびいどろ・ぎやまん」は、11月23日(月・祝)まで、神戸市立博物館2階の南蛮美術館室・特別展示室2で開催。休館日は毎週月曜日(ただし11月23日は開館)で、開館時間は午前10時から午後6時まで(金曜日は午後8時、土曜日は午後9時まで開館)。
■神戸市立博物館
https://www.kobecitymuseum.jp/