ここにもスピード感?『脱・ハンコ』~是か非か(4)神戸の若手女流書道家「本当に大切なもの」とは? | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ここにもスピード感?『脱・ハンコ』~是か非か(4)神戸の若手女流書道家「本当に大切なもの」とは?

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『脱ハンコ』とはいえ、書の世界では必須のハンコ。日常生活と書の世界。神戸で生まれ育った新進気鋭の女性書道家・繁本香菜さんに聞いた。

繁本香菜さん
繁本香菜さん

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 印は書道においては、作品の紙面上の空間を微調整するための表現、あるいは美でもあり、木・石などに印を彫る篆刻(てんこく)というひとつの分野が確立されているくらい、重要視されています。また、不動産などの高い信用が求められる契約では、紙面上における実印は欠かせないため、簡単にはなくならないと推測しています。
 しかし、リモートワークという生活スタイルが出来あがりつつある中、『脱ハンコ』 をすることで、場所にとらわれない働き方を実現することができると思います。
 例えば、出勤簿の押印、そして押印された重要書類の保管・管理の観点から、今までは働く人がその場にいかなければなりませんでした。そうした状況の中、脱ハンコができれば場所に囚われず、オンラインで意思決定ができ、どこからでも働けるようになります。

繁本香菜さんの書

 書道家として、ハンコ屋さんが築いてきた伝統文化や書道の篆刻文化を継承するという観点からは脱ハンコに賛同できません。しかしながら、リモートワークやステイホームをより充実したものにするための脱ハンコ文化は時代に相応していると感じ、推奨していくべきではないかと考えています。

 その取り組みの一貫として、私自身は西宮神社での御朱印のお手伝いと、篆刻のオーダメイドのお仕事をしてきました。これらは今後も継続していきたいと思います。制作の過程に込めた想いが押印によって伝わるような文化は、脱ハンコが広がる世の中でも大切にしていきます。このことが、伝統文化を継承しながらも世の中の情勢やニーズに合わせて適応していくことであると考えます。

繁本香菜さん
「伝統文化、継承しながらも世の中の情勢やニーズに合わせて・・・」

 ハンコだけではなく、他の分野についても、時代の変化につれて便利な物が主流となり、従来の形式化されたものや伝統が省略されつつあります。茶道においてはお茶を点てることからペットボトルのお茶へ、書道においては固形墨から墨液へ。本当に大切なものを見失っていないか、私自身も胸に手を当てて考える機会になりました。

繁本香菜さんの書
繁本香菜さん「中国書法」

◆繁本香菜(雅号・佳華)1996年、阪神・淡路大震災の翌年に神戸市に生まれる。兵庫県立兵庫高校、奈良教育大学卒業。大学在学中に「書道教室」を開業。現在は中高一貫男子校の非常勤講師を務めながら、京阪神で7つの書道教室を展開、中国本場の書法をベースに、日本の書法と台湾の書法、主に三国の書法を指導している。

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