播磨灘と大阪湾でイカナゴ漁が2月29日、解禁されたが、初日の水揚げは予想通り不漁。明石市の林崎漁港では漁獲ゼロ。兵庫県立水産技術センターによると、今年のイカナゴは4年連続で不漁となる見通し。
明石浦漁港での初日の水揚げは450キロ。平年に比べて大幅に少なく、1かご25キロ入りのケースが7万円で取り引きされた。
漁獲量が減った理由を海が汚染されたからだと指摘されがちだが、水産庁の「お魚かたりべ」にも任命されている明石浦漁協の高山淳子さんは「海がきれいになりすぎて、プランクトンが減った」と指摘する。
「いまや『ちりめん(=シラス・イワシ類の稚魚)』の中にイカナゴが見えている、という感じかな。ちりめんならたくさん漁れるけど期間が決まってるからね。イカナゴ、いま明石では無理に漁ったらあかん。3年ぐらい前までは『フルセ(生後1年以上のイカナゴの成魚)』もよく漁れてた。醤油漬けにして焼いたら美味しいけど、今はダメやね」。
約4か月先には半夏生を迎える。2018年には名産「明石ダコ」が不漁に。その前の冬場に海水温が低下し、生育が芳しくなかったのが原因とされる。「明石のタコは明石海峡のカニやエビ、貝などをエサにしているから、うまみも最高。海は本来それぐらい栄養豊富なんだから」。
高度経済成長期、日本の海は濁ってしまった。
しかし、今は海の水質改善が進みプランクトンが少なくなり、海に栄養が足りていない。かつて瀬戸内海や琵琶湖ではプランクトンが大量発生する「赤潮」が頻発した。プランクトンが大量に酸素を消費するため海水の酸素が欠乏して大量の魚が死んでしまった。その後、海中の浄化が大きく進み「見た目には」透明度を増した。
瀬戸内海での赤潮の年間発生件数は、1976(昭和51)年の299件をピークにその後は減少、2019年は100件を切るまでになった。高山さんは海が浄化されすぎて、平均海水温が40年前に比べて高くなったことも危惧する。
兵庫県の水産技術センターは、水質が改善され「栄養塩」と呼ばれる海中の窒素やリン分が減少したと分析。それに伴い魚のエサとなるプランクトンも減っているという。
瀬戸内海ではこの20年で、漁獲量が減少。かつて赤潮に悩まされた同じ海でプランクトンが減少したのと比例する。兵庫県では下水処理場の排水の窒素濃度について独自に厳しくしていた規制を撤廃させる対策を打ち出した。
例年2月末~3月上旬に解禁されるイカナゴ漁、2017年以降は極端な不漁から、例年1か月あまりの漁期を大幅に短縮。昨シーズンは大阪湾での操業を3日間で終え、播磨灘も21日間で終えた。
今シーズン、播磨灘では3月2日に漁業関係者が集まり漁の期間を検討する。