ラジオ関西で毎週日曜夜(19:30-20:00)に放送中、ジャズヴォーカリストの阪井楊子さんが、ジャズを中心とした素敵な音楽と気楽なおしゃべりで楽しい夜のひと時をお届けする、『阪井楊子の雨に濡れても』が、6月30日の放送回で、放送300回を迎えました。パーソナリティーを務める阪井楊子さんのインタビュー【後編】では、ジャズの街・神戸との縁や、秋に開催されるスペシャルライブについての話、ライフワークとなっているライブステージや、ジャズヴォーカリストとしての歩みなども伺いました。
――第7回神戸ジャズヴォーカルクイーンコンテストで準グランプリを受賞され、神戸にあるラジオ関西で長らく番組を担当されるなど、神戸とは縁深いものがあると思われます。ジャズの街でもある神戸についての印象は?
神戸では24年前の震災があって、でも、そこからたくさんの方々が頑張られて、ジャズの街・神戸として、見事に今、元気に、たくさんのアーティストがジャズを演奏されているような街を作り上げられています。これは、本当に素晴らしいこと。また、そういう地で、もう10年以上前の話ですが、ジャズヴォーカルクイーンコンテストを受けさせてもらって、準グランプリをいただいて、そこから、今、こうやって神戸に来させてもらって、ラジオ関西でお話させていただいているのは、本当に奇跡だなと思いますし、特別なご縁を感じています。
――その神戸で、この9月、「阪井楊子の雨に濡れても放送300回記念スペシャルライブ in HARBORLAND」が、ラジオ関西そばのモズライトカフェ(神戸情報文化ビル・カルメニB1F)で開催されます。特別な思いのこもったライブになると思われますが、今、企画されていることは?
(インタビュー収録時点で、開催まで日があることもあり)まだ内容は全然考えていないのですが、(これまでのモズライトカフェでのスペシャルライブから)ピアニストとベーシストが初出演の方ですし、そして、今回は300回放送記念ということで、メンバーもいつも以上に楽しみにしてくれています。いつもよりも盛り上がりそうな気が今からしています!
――阪井さんは本当に数多くのライブステージで歌われていますが、ライブへのこだわりなどありますか。
もうライフワーク的な感じですね。これでもちょっと減らしたほうで、今は月にだいたい15本以内ですが、前は昼夜とステージを行い、月に20本以上やったりもしていました。ただ、今のようにすることによって、1回1回のクオリティが高くなるなというのは感じています。新しい曲もどんどん取り組んでいけますし。詰め込んでいたときは、来た仕事は全部受けたいという気持ちでやっていたのですが、聴いている人に「癒されてほしい」、「ゆったりした気持ちになってほしいな」と思っているのに、自分がすごい忙しいというのは、これはちょっと矛盾していると、ある日から思いだして、今に至ります。
――ここで、阪井さんが改めてジャズシンガーとして歩みを進めることになったきっかけについて教えてください。
J-POPをずっと歌っていて、それから先もJ-POPを歌う予定だったのですが、歌をちゃんともう1回勉強したい、歌というものをもっと練習したいと思って、あちこちの学校をどんなんかなと見学に行ったりしていました。そこで、ひとつ決めた学校が、「ここに通えば3か月後からライブをさせてあげる」というところだったんです。これは楽しそうだと思って入ったら、そこがジャズだった。それまでジャズとか全然知らなかったのですが、「あなたこれ歌える?」といって渡されたのが、『FLY ME TO THE MOON』という曲で、それすらも知らなかったときだったのですが、聴いたとき、「こんなおしゃれな音楽の世界があるのか」と初めて知って、そこからですね、一気にはまっていきました。
――特に思い入れのある、大切な曲について教えてください。
『LIBERTY』という、ジャズの曲ではなく、吉田美奈子さんの曲なんですが。自分なりにアレンジして歌うということを、8年前くらいからしていて、それからずっとその曲を、何か大切なイベントのときには最後に歌うというのが、私のスタンダードというか。それを望むお客様もすごく多くて。どっちかというと、明るい曲というよりかは、ちょっとゴスペルチックな、力強く歌い上げる曲なのですが、その曲に励まされるという方がすごくたくさんいらっしゃっるんです。私もその曲に励まされてきたひとりなんですが、自分が歌うことによって、たとえば昼にいやなことがあった人が夜に笑顔で帰るとか、そういったことがすごく多くて、そういうパワーのある曲だなと。だから、私にとって『LIBERTY』は特別な曲かなと思っています。
――阪井さん自身の歌声、お話されるときの声の魅力もすごく感じられますし、その声に癒される方も多いと思われます。
もともとはこんな声じゃなかったんです。ジャズを始めてからなんです。ずっとずっと歌ってきたからというのもありますが、ジャズをはじめて最初に憧れたのが、メル・トーメ(Mel Tormé [Melvin Howard Tormé] )という歌手だったんです。当初、ものすごく声の低い女性だと思っていて、(その声が)かっこいいなと。私もメル・トーメのようになろうと思って、ずっと低い声の出る発声を練習していました。当時、スマホとかもないので、メル・トーメがどんな方かよくわからなかったんですが、ある日、メル・トーメが亡くなったときに、(新聞などで)男性だったのを知ったんです。えらい声の高い男性だったんだと。そこで、私の今までの発声は何だったんだと思ったんですが……(苦笑)。今では高い声も、低い声も両方出るように努力しています。でも、その声をよく思っていただけるのは、ありがたいと思います。
――さて、阪井さんのなかで、今後、どういったところを目標にされていますか?
ジャズもそうですが、自分のオリジナルも作り出したり、J-POPなども含めて歌っていきたいですし、ジャズもそれ以外のナンバーもどちらも楽しめるようなステージづくりをしていけたらいいなと思っています。ラジオでも、全部日本語で歌っている新しいCDをかけたりだとか、当初はこの番組でそれはいいのかなと思いつつ、ディレクターさんもプロデューサーさんも「いいよ」と言っていただけるので、そういったことにも取り組んでいきたいです。
――一緒に番組を作られている方々の存在について。番組のなかでも掛け合いの様子を聴くこともありますし、すごくいい雰囲気でやりとりされているように思えます。
ディレクターの今林さんとプロデューサーの田中さんがものすごく仲が良くて、ものすごくロマンチストで、ものすごく音楽を愛されていて、知識がすごくて、本当にすごい。おふたりに常に教えていただきながら、番組でしゃべらせていただいています。ラジオのお仕事でいろんな経験をされてきている方々なので、一言ひとことのアドバイスがすごく深く、それがラジオ以外でもどこでも使えるようなものなので。また、音へのこだわりのところでは、できるだけ途中で(曲を)フェードアウトしないというところ。(聴いていて)いいなと思うところで(フェードアウトで)小さくなっていくのはさみしいし、そこは大事にしていて、私もすごく共感しています。30分番組で4曲、最後まで流しながら、そこでしゃべるのはギリギリなところですが、そこはせめぎあいですね(笑)。でも、それは大事にしたほうがいいと思います。
――それでは、最後にリスナーの方、トピックス読者の方へのメッセージをお願いします。
まずは、いつも応援してくださってありがとうございます。たいしたお話はいつもできていないと思うのですが、聴いてくださった方がたとえばお昼間にちょっといやなことがあったなとか、今週さびしいことがあったなとか、明日いやなことがあるなとか、そういうこととかがもしあったとしても、番組を通して、なつかしい曲に触れたり、私のたわいもないおしゃべりだったりとかで、ふと心がゆるくなって、リラックスして眠れたり、楽しく明日を迎えられたり、仕事ができたり、少しでも気持ちのお手伝いができたらなと思って、いつもしゃべらせていただいております。気負わず、リラックスして、ゆるく聴いていただいて、これからもただ楽しんでいただければうれしいなと。そして、機会がありましたら、ライブにも会いに来ていただき、ラジオの緩い私と、ライブの激しい私とのギャップを楽しんでいただいてもいいかなと思っています(笑)。これからもよろしくお願いします!
【プロフィール】※公式ホームページより一部引用
阪井楊子(さかい・ようこ)
大阪府吹田市出身。幼少の頃からピアノを学び、ジャズ・映画音楽を聴いて育つ。ジャズ界の重鎮、古谷充氏に師事。ジャズ、J-POP、R&B、ポピュラーミュージックなど、レパートリーは幅広い。関西一円を中心に、全国各地で活動の場を広げ、会場を包み込む歌声とステージングに定評のあるジャズヴォーカリスト。第7回神戸ジャズヴォーカルクイーンコンテストで準グランプリを受賞した経歴を持つ。ギターとヴォーカル(そしてショルキー)で奏でるオリジナルポップスの世界『Leo×Leo』のヴォーカルとしても活動中。ラジオ関西『阪井楊子の雨に濡れても』は2013年10月から放送開始(当時は月曜日に放送)。公式ホームページはhttp://yoko-jazz.com/