プロ野球・阪神タイガースの伝説の4番打者で、「ミスタータイガース」として親しまれた掛布雅之さん(HANSHIN LEGEND TELLER)が、神戸のラジオ局、ラジオ関西の番組に初出演。“好敵手”として、名勝負を幾度も繰り広げた江川卓さん(元巨人)とのエピソードを明かした。
ラジオ関西『としちゃん・大貴の ええやんカー!やってみよう!!』に出演した掛布さん。番組パーソナリティーを務める田中大貴さん(元フジテレビアナウンサー)から「江川さんとの対戦でも、比較的、得意とされていましたよね。どんな感じのピッチャーなんですか? どういう対策を取られていたんですか?」と質問を受けると、帰ってきた答えは、「対策はないです。彼の真っすぐを打つということしか考えていませんでした……」。
ただし、江川さんのすごさも、身に染みて痛感しているという。「彼が一番いいときのボールは、彼自身が投げた瞬間に、もう山倉(和博)というキャッチャーのミットに入っている感じです。投げた瞬間に。(江川は)その途中に、バットの上を通過するボール(のイメージ)が見えるというんです」。
江川さんといえば、カーブとストレートが持ち味。そのなかで、ウイニングショットの高めのストレートをあえて打ちに行ったと、掛布さんは話す。そして、当時の監督も、主砲にそのストレート打ちを託していた。
「阪神のゲーム前のミーティングのなかで、監督から『高めのボールの見極めをちゃんとしないと、江川は攻略できない。高めのボールは手を出すな』と言われるんです。でも、ミーティングが終わったあとに、監督に呼ばれまして、『おまえはその高めのボールを打ちたいんだろ』と。『そうです』というと、監督から『打ちなさい』と」
ただし、そこには真意があった。
「『おまえが打つか打たないかは、チームの勝敗を左右するくらい大きなことだ』と。自由に打席に立たせてもらって、自分の狙い球を狙っていいんですが、その監督の言葉のなかに“チームの勝敗を背負っている”もの(真意)があり、すごく重たいんです。そうなると、雑に打ってはダメだという気持ちになるんです」
その思いに、チームを背負う主砲の心意気を感じさせる。「監督に自由を与えられる反面、その自由が自分を縛りますよね。だから絶対に打たなきゃダメだと。彼と4打席勝負したら、最低でも1本は打たなきゃと。狙いはストレートのみで」と、掛布さんは堂々と立ち向かった当時を振り返っていた。
(文:黒川良彦)
※掛布さんがゲスト出演の『としちゃん・大貴の ええやんカー!やってみよう!!』後編の模様は、2月26日(金)午後8時30分から、ラジオ関西で放送される。