兵庫県警察本部に警察庁長官官房付から4月5日付で着任した種部滋康(たねべ・しげやす)氏が兵庫県警本部で会見し「絶えず県民の期待と信頼に応えることを念頭に、何をすべきか問い続け、実行に移したい」と抱負を述べた。
種部本部長は東京大学法学部を卒業後、1987年に警察庁に入庁、警視庁警備第一課長や大阪府警交通指導課長、愛知県警警備部長、鹿児島・茨城県警本部長などを歴任。兵庫県警では2009年8月から2年間、警務部長を務め、県内の48警察署(当時)をくまなく回り署員の声に耳を傾けた。今回10年ぶりの勤務となる兵庫の印象については「『兵庫五国』といわれる多様性に富んだ街、“ダイバーシティ”=多様性こそが活力を生み出すという観点で潜在能力が高い風土」と述べた。
そして「兵庫県警を語るうえで忘れてはならないのは、阪神・淡路大震災。当時警察庁警備局でリアルタイムで被災状況を取りまとめた。だからこそ、神戸で過ごす1月17日には特別の思いがある。さらに兵庫在任時の2011年3月11日に東日本大震災が起き、さまざまな災害対策に取り組んでいたが、発生直後に兵庫県警からも機動隊を中心に被災地・岩手県へ部隊を派遣したことは記憶に新しく、こうした一つひとつが流れとしてつながっている」と振り返り「何が起こるかわからない、という考えのもとでの災害対策が重要」と話した。
このほか特定抗争指定暴力団・六代目山口組と神戸山口組、いわゆる「2つの山口組」については、「昨年(2020年)11月に拳銃使用による殺人未遂事件が起きており、予断を許さない。また今年に入り尼崎・神戸で起きた発砲事件が未解決のまま。暴力団対策法を駆使した総合対策を進めたい」と意欲を見せた。また「コロナ禍における警察機能の維持は重要課題。警察として一次的な業務となる110番通報の対応は、デスクワークやテレワークというわけにはいかない。対面での業務が中心となるだけに感染防止対策はしっかりと講じたい」と述べた。
座右の銘は「誠実・誠心誠意」。警視庁警備部勤務時代の2007年、東京・板橋区の東武鉄道線の踏切で自殺しようとした女性を助けようとして、殉職した交番の警察官の葬儀で目にした、故人の警察学校卒業時にしたためた寄せ書きがきっかけ。「そのひとかけらでも見習いたい」と感じたのが理由だという。石川県出身。57歳。