4月28日、関西にある商業ビルの5階で、建築物の害虫である「イエシロアリ」の発生が確認された。このことに、害虫を防除する業界が大変驚いているという。なぜそれが大きなトピックなのか。シロアリなどの害虫防除を専門に扱う今村化学工業白蟻研究所の代表取締役・今村誠治さんに話を聞いた。
「私どもが驚いているのはビルから発生したことではなく、イエシロアリが発生した時期です。例年、イエシロアリは、6月~7月の、ムシムシした夜、照明に集まるように飛び立つという行動をします。ただし、今年は、連日の夏のような暑さがトリガーとなったのか、異例の早さで発生しています。私自身50年以上この世界に身を置いていますが、初めての経験です……」(今村化学工業白蟻研究所・代表取締役・今村誠治さん)
「イエシロアリ」は、シロアリのなかでも日本に広く分布し、建物に害を及ぼす代表的な種。暑くなった日の夜に群れをなして飛びまわり、行動力や破壊力が高く、激しい被害を及ぼす獰猛な危険種とされている。そんな、迷惑極まりない存在が、例年よりかなり早く現れたのだから、プロが驚くのもうなずける。
「イエシロアリは、水を運ぶ能力があるため、建物の乾燥した木材でも湿らせながら加害し、被害は2階や天井裏など建物全体に及びます。よく『鉄骨だから大丈夫』『土間コンクリートだから問題ない』と声を聞きますが、それは間違った認識。住宅であれば木材は必ず使われているのでその部分に被害を受けることがあります」
建築構造に関係なく、発生し被害を与えるというシロアリ。とにかく早期発見、早期駆除が大切だという。「家の中や周辺で羽アリを見た、柱や敷居を叩くとウツロな音がする、歩くと廊下や板張りがプカプカする等の症状があれば、すぐに専門家に調査を依頼してほしい」と専門家の立場から注意喚起していた。