今年で創業73年目を迎える和菓子の老舗店が、いま、「あんこをスポーツに取り入れる」というプロジェクトに取り組んでいる。
「コロナの影響で、百貨店も経営が厳しくなっている今、何か(和菓子が)お役に立てる場面はないかと考えていたとき、あるフルマラソン選手の方から『糖質補給できるものを持って、走りながらとらないと体力が持たない』という話を聞きました。さらに、ボディビルのバックヤードにはおはぎが並んでいる、という話も聞いて、脂質が少なくて糖質がしっかり摂れるあんこは『スポーツに最適なんじゃないか?』と思い、今プロジェクトを進めている最中です」
そう語るのは、株式会社福壽堂秀信(大阪市中央区)の専務取締役・岡本將嗣さん。
福壽堂秀信は、1948(昭和23)年に南地宗右衛門町で創業。現在は帝塚山に本店を構え、百貨店などを中心に和菓子の製造小売販売をしている。「100%自家製あんこ」にこだわり、兵庫県丹波から仕入れた厳選小豆を自社工場で丁寧に製餡し、あんこが命、という先代の信条を守り継いできた。
しかし、ここ数年で洋菓子ブームが続き、若者の和菓子離れが懸念されている。その原因の1つとして挙げられるのは「当社の和菓子は、お中元やお歳暮といった儀礼的なギフトとして贈られるのが主流でしたが、若い世代ではそういった習慣が薄れつつあるように感じます」(岡本さん)とのこと。ただし、父の日や母の日・誕生日などパーソナルな記念日に、お菓子でお祝いや感謝の気持ちを表す人は多いようで「そういったイベントや記念日に適応した商品を作ったり、通販に力を入れていきたい」と、岡本さんは話す。
そのなかで、同社が新たに挑む、「あんこをスポーツに取り入れる」プロジェクト。プロダクトデザインや商品名などは未発表だが、2022年3月の大阪マラソンが開催される頃には、サンプルの頒布を目指しているとのこと。最終的には正式な商品化につなげ、国内だけではなく国外への展開も視野に入れているそうだ。
「社内のスローガン『大ピンチは大チャンス』という言葉通り、売上だけ見るとゾッとする1年でしたが、その反面、普段なら出会えなかった人と出会えたり、スポーツ業界という新たな市場も見つけられた1年でもありました」と振り返る岡本さん。創業70年以上という歴史を持ちながら、今もなお挑戦を続け、和菓子の魅力を世の中へ発信したいという思いを語っていた。
※ラジオ番組『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2021年8月9日放送回より