大阪湾、播磨灘、淡路島沿岸では、毎年9月~翌年5月、「のり養殖施設」(通称:のり網)が多数設置される。近畿農政局によると、兵庫県産の “養殖のり” の収穫量は全国2位。
※収穫量算出は2021年5月28日公表「2020(令和2)年漁業・養殖業生産統計(概数値)」による。全国順位は、統計数値を公表していない都道府県を除いたもの
明石海峡を中心とした潮流の速い漁場で、「浮き流し方式」と呼ばれる養殖方法で行われる。兵庫のり研究所(兵庫県明石市二見町南二見)では毎年9月下旬から “種付け”(ノリの胞子を定着させる)と呼ばれる作業が行われ、種付け後、その網を作業場の海水につけて胞子を定着させた後、養殖場などで育てられる。兵庫のりは色が濃いのが特色。
今年(2021年)9月の設置開始から、すでに船舶6隻が兵庫県明石市や淡路島沿岸の「のり網」に乗揚げており(※11月24日現在)、例年同期と比べ約2倍のペースで事故が急増している。事故の大半は 、操船者 が 「のり網」の構造をよく把握しないまま、十分な距離を置かないで接近し、「のり網」に乗揚げ航行不能になるのが原因。
近年では、人気のウォーターアクティビティーとして、サーフボードよりも少し大きめの板の上に立ち、パドル(櫂・かい)を使って漕ぐ「SUP(スタンドアップ・パドルボード)」が盛んで、本体に「のり網」の固定ロープがからんで陸に戻れなくなり、救助を求める事故も発生している。
■のり網に乗揚げた場合のリスク3点
〇船舶が航行不能に陥るだけでなく、悪天候の場合、船舶が転覆して海中に投げ出され、生命の危険にさらされる
〇船舶を航行不能にしたとして、業務上過失往来危険罪等で刑事責任を問われる可能性がある
〇のり網を切断等し、施設を損傷させた場合、また、転覆等により燃料油を海上に流出させて漁業被害等が発生した場合は、多額の損害賠償等、民事上の責任を問われ、賠償を請求されるケースも