大学教授が語る観光業育成への危機感「観光の現場が学生にとって憧れの場になっていない」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

大学教授が語る観光業育成への危機感「観光の現場が学生にとって憧れの場になっていない」

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 政府委員としてDMO(観光地域づくり法人)政策を主導した実績を持つ芸術文化観光専門職大学(兵庫県豊岡市)教授の大社充さんが、同大学で学長を務める平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)に電話出演。教鞭をとる思いや、今後の観光業育成への考えなどを語り合った。

大社充教授(写真:芸術文化観光専門職大学)
芸術文化観光専門職大学の学長を務める、劇作家・演出家の平田オリザさん

 高齢者向け生涯教育プログラムの1つ、エルダーホステル事業などにも携わった大社さん。平田さんとは、かつて国土交通省成長戦略会議観光部会でともに名を連ねていた間柄だ。

 平田さんは番組冒頭「(芸術文化観光専門職大学の教員募集)願書を出してきていただいてびっくり。こちらとしてはうれしかった。どうして応募くださったのか」と問いかけた。

 これに対して大社さんは「エルダーホステル事業を30年近く、そして政府政策(DMO)でも筋道をつけたので、関西に移住しようと思っていたところに、新設校の情報があったので……運命ですね(笑)」と当時を振り返った。

 同大学では「観光のまちづくりとは何か」を多角的な視点で問い直す「観光事業概論」や観光の方法論、観光地の経営手法を学ぶ「ディスティネーションマネージメント論」を担当する大社さん。半年間、学生らと接していて感じたことは「『お勉強』では意味がない。自分の主体的な学びでないと意味がないんですよね。それをどうやってみつけるか」ということ。「非常に優秀な学生もいるし、ばらつきもある。教員が考えないといけないのは、偏差値以外の要素で各々の良さを評価し、それで対価が得られるような環境を作ること」と評価基準に言及。「気を付けないといけないのは、『自分がこうだったからこう』(という考え)。時代は変わってきているので社会に対応できるよう、こちらも学びながら進めていきたい」と述べた。

 話題は日本における観光業の育成にも。「教員も『社会を変える当事者』として働く環境も整えていく必要がある。観光の現場が学生にとって憧れの場になっていない。すでに観光系の学科を持っている大学では聞いた話だと4割くらいしか観光業に進んでいない。東京のIT企業に就職したりする。30、40代のロールモデルがない」と、大社さんは危機感を持つ。

「世界的なカンファレンスではDMOマーケティングが登壇したりするが、日本でフォーカスされるのはITのコンサル系。だからこそ個人的には行き詰まり感を感じている。個人的な思いつきではあるが、例えば会社を作って昼間は仲居さんとして派遣、いっぽうで芸術的素養を活かして夜はお座敷で踊りや演劇を披露する。そうすれば単価が上がり、給料が上がる。次のフェーズも見えてくる。成長したいという思いを応援したい」(大社さん)

 平田さんも「僕も将来的に大学でペンションでも持ったらどうか、とも思っている。ただし、手取り足取り面倒を見るのも問題。自分で道を切り開いていく力を身に着けるかも、一方では課題ですね」とコメント。放送は観光立国・日本のビジョンを問い直す内容となっていた。

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2021年11月25日放送回より


※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。

『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp

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平田オリザの舞台は但馬 | ラジオ関西 | 2021/11/25/木 13:00-13:25

放送後1週間聴取可能、エリア内無料 radikoプレミアム会員はエリア外聴取可

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