北朝鮮による拉致被害者を取り上げたパネル展が10日、神戸市中央区の兵庫県警本部などで始まった。これに先立つ9日、留学先のイギリス・ロンドンで消息不明となった神戸市長田区出身の拉致被害者、有本恵子さん(失踪当時 23)の父・明弘さん(93)が訪れ、早期帰国に向けて拉致問題解決を訴えた。パネル展は16日まで。
拉致問題を風化させず、拉致被害者らの情報提供を広く呼び掛けるため、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(毎年12月10日~16日)に合わせて開催。恵子さんと神戸市出身の拉致被害者の田中実さん(失踪当時 28)、また兵庫県内で拉致の可能性が排除できない特定失踪者(男女27人)の顔写真やプロフィールを紹介している。
恵子さんは1983年に消息を絶った。明弘さんは「日本政府はずっと(拉致問題を)放ったらかしにしてきたのではないか。特にコロナ禍で見過ごされている。恵子(現在61歳)も帰ってくる頃には、もうおばあちゃん。ただ、日本に帰りたくても、帰れない事情もあるんじゃないか。長きにわたる(北朝鮮での)生活もあるから。去年、妻(嘉代子さん・享年94)も先立ち、私にも残された時間は限られている」と語った。
そして「親子3代にわたる独裁国家、北朝鮮への対応は一筋縄でいかない。岸田総理は、拉致問題解決に向けての志半ばで去年退任した安倍元総理からのアドバイスを受けてほしい。恵子には待っててほしい、と言いたい」と話した。
兵庫県警本部別館7階 神戸優良・高齢運転者免許更新センターでは、パネルに加え、明弘さんが恵子さんへの思いを語るビデオメッセージも上映する。パネル展示は午前9時~午後5時45分(ビデオ上映は午前9時~午後4時 いずれも11日を除く)。
このほか明石運転免許更新センター2階(明石市荷山町)や兵庫県庁2号館1階(神戸市中央区下山手通5丁目)などでも開催。