「パパが“女性”に」 10代の娘の視点で描くLGBTQ 映画『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「パパが“女性”に」 10代の娘の視点で描くLGBTQ 映画『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』レビュー

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 パパは“女性”になりたい……。思春期の娘の心の旅を通してLGBTQと「家族」を描くデンマーク映画『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。

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『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』 12月24日(金)より全国順次公開、配給:エスパース・サロウ (C)2019 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

 深刻な家族会議の場ではなく、明るいランチタイムの食卓。好みのピザを食べながら突然告げられたパパとママの離婚。しかもその理由というのが、パパが女性になりたいから……!

 デンマークの郊外で暮らす一家。家族そろって飼い犬を選びに行くし、パパのトマス(ミケル・ボー・フルスゴー)は、サッカーを教えてくれたり、地元サッカーチームの練習への送迎や応援もしてくれたり。ママのヘレ(ニール・ランホルト)も、いつも優しい。そんな、みんな仲良しの“普通”の家庭に降って湧いた大事件。

 にわかには信じがたい、受け入れられない現実に戸惑う多感な11歳のエマ(カヤ・トフト・ローホルト)。実は、パパにとっては前から考えていたこと。ホルモン治療を受けて、体は女性らしくなった。名前も「アウネーテ」に変え、やがて性別適合手術も受けるというのが自然な流れかもしれなかった。しかし、エマと姉のカロリーネ(リーモア・ランテ)にとっては、まさに青天のへきれき!

 家族の為のクリニックへセラピーセッションに通うも、マフラーで頭をぐるぐる巻きにして拒否の態度をとるエマ。それでもパパが大好きなエマは、別れ際にマフラーを取り「これからも、私の“パパ”でいてくれる?」と切実に訴え、パパは優しく「もちろん、約束する」と答えるのだった。

 約2か月後、タイで性別適合手術を受けて帰国したパパと対面した姉妹。姉のカロリーネは、身も心もアウネーテとして生まれ変わったパパを受け入れるが、エマはまだモヤモヤを抱えていた。そして、3人で出かけたマヨルカ島でのバカンスで、エマはやっぱり現実を受け入れられない自分に直面する……。

 監督・脚本のマルー・ライマンはオランダのアムステルダム出身の女性。10代のころからデンマークの映画やテレビシリーズで俳優として活躍した後、監督として数々の短編映画を手がけている。賞も受けており、これが長編映画監督としてのデビュー作だ。今作は自分の経験を元に脚本を書いたとのこと。実は彼女自身、父親が女性になったという経験を持っているのだ。でも、この映画は決して自分の為に製作したのではない。誰かに共感してもらえるようなストーリーを、ということで撮った作品なのだそう。

 デンマークは世界に先駆けて、1989年に同性パートナーの「登録パートナーシップ」を法律で認めた国。そして今や、18歳以上であれば、性別適合手術を受けていなくても、性別変更を申請することが可能になっている。世界的に“LGBTQ”が市民権を得てきているという時代の流れを考えると、今後この映画のような家族関係も、少数の特異なものではなくなってくるのかもしれない。


◆『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』
12月24日(金)より全国順次公開、「シネ・リーブル神戸」では2022年1月7日(金)より公開
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
監督・脚本:マルー・ライマン 
出演:カヤ・トフト・ローホルト、ミケル・ボー・フルスゴー、リーモア・ランテ、ニール・ランホルト
2020/デンマーク/デンマーク語・英語/ビスタ/カラー/5.1ch/97分/PG12 
原題:EN HELT ALMINDELIG FAMILIE
英題:A PERFECTLY NORMAL FAMILY
日本語字幕:中沢志乃
後援:デンマーク王国大使館
配給・宣伝:エスパース・サロウ
(C)2019 NORDISK FILM PRODUCTION A/S
【公式サイト】

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ばんばひろふみ!ラジオ・DE・しょー! (2) | ラジオ関西 | 2021/12/22/水 11:00-12:00

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