神戸市西区の路上で2021年5月、妻(当時81)を刺殺したとして殺人・銃刀法違反罪に問われた夫(80)の裁判員裁判が11日、神戸地裁で始まり、夫は「介護に疲れ、妻の同意を得ていた」と起訴内容の一部を否認、承諾殺人罪の成立を主張した。判決は1月20日。
夫は5月18日夜、神戸市西区の路上に止めた乗用車内で、妻の首や胸などを自宅から持ち出した包丁で複数回刺し、殺害したとされる。
裁判は、妻が殺害を承諾していたか、またその承諾を夫が誤解していたかが争点。
検察側は、妻が2014年にがんの手術を受けてから、精神的に不安定になり、体の痛みも強くなったため「死にたい」と訴えるようになった。しかし、訪問介護のため自宅に出入りしていた女性の証言からは、妻の言動は生きることを前提としたものだったことがうかがえると指摘、さらに妻が刺された後、助手席のドアを開けて乗用車から逃げようとしたことなどを踏まえ、承諾殺人罪については否定した。
一方、弁護側は、妻の「あなたが一緒に死んでくれるなら、私も死ぬ」という言葉で、夫は心中を決意し、先の見えない介護生活に失望していたと主張した。また、夫が妻を刺した時に、妻は痛みに苦しみながら「お父さん、あなたも死んでよ」と言葉を発し、夫も「わしも死ぬから」と声を掛けたことを明かした。