寒い日が続くなか、外出の際に持ち歩きたいのが体を温めてくれる「カイロ」。手軽で安価な使い捨てカイロも良いですが、SDGsなカイロとして注目されているのが「ハクキンカイロ」です。ハクキンカイロ株式会社(大阪府大阪市)代表の的場恒夫さんにお話を聞きました。
「ハクキンカイロ」は、繰り返し使用できる真鍮(しんちゅう)製のカイロです。使い方は、本体にベンジンというオイルを注ぎ、プラチナ触媒がセットされた火口を3〜5秒間ライターなどの火で炙るだけ。本体は使い捨てカイロの約13倍・70度近くまで温まるので、袋に入れて持ち運びます。気化したベンジンが、プラチナの接触作用により炭酸ガスと水に分解されるときに発生する熱を利用して暖をとる商品のため、環境に優しいエコなカイロだといえます。また、25ccのべンジンで最大約24時間保温できる燃費の良さが注目されています。
そんな「ハクキンカイロ」は、来年(2023年)で誕生100周年。1923年の誕生以来、100年近くも使用され続けてきた超ロングセラー商品です。的場さんによると、一番ヒットしたのは1960年代頃。1962年に南極観測隊がハクキンカイロを携帯したことをきっかけに、国民的人気商品に。氷点下40℃の極寒の環境にも負けない丈夫さで注目されました。その後、使い捨てカイロの登場で売り上げが押されたこともあったそうですが、環境問題への意識の高まりなどから、2000年頃に再びヒット。以降、現在まで売り上げは右肩上がりなのだそうです。
当初は、腰痛やリウマチなどの身体の痛みを温めて緩和させるために開発されたという「ハクキンカイロ」。そのため、昔は薬局などで購入できる「医療品」でした。現在では、登山や釣り、キャンプなどの際のアウトドアグッズとしても人気で、ホームセンターや釣具店、アウトドアショップなどで販売されています。
ちなみに、「ハクキンカイロ」がヒットしているのは日本だけではありません。環境問題への意識が高いヨーロッパでは、20年以上前から「ハクキンカイロ」が注目され、現在でも高い人気を誇っています。「ええもんを長いこと大事に使う、というのがカッコええでしょ?」と、的場さん。これからも目が離せないアイテムの1つ、「ハクキンカイロ」とともに、SDGsも意識しつつ、寒い冬も温かく過ごしたいですね。
(取材・文=村川千晶)